税理士ブログ
仮想通貨で得た利益は課税対象?
こんにちは、税理士の阿部です。
ビットコインをはじめとした仮想通貨(暗号資産)は、もはや一部の投資家だけのものではなくなりました。副業やお小遣い稼ぎ、はたまた“億り人”を目指す方まで、その関わり方は人それぞれです。
しかし、忘れてはいけないのが税務申告の世界にはブロックチェーンはなく、“取引履歴を人力で集める”というアナログな現実が待っているということです。
今回は、仮想通貨取引で得た利益の基本的な税務処理と、よくある落とし穴を解説します。
■ 仮想通貨の利益は「雑所得」に分類
個人が仮想通貨を売却して得た利益は、原則として「雑所得(総合課税)」になります。
つまり、株式やFXのような分離課税(税率20.315%)とは違い、給与など他の所得と合算して税率が決まるため、所得が高い人ほど税率も高くなる仕組みです。
たとえば…
-
仮想通貨を売却して利益が出た
-
仮想通貨で商品を購入した
-
仮想通貨同士を交換した(例:ビットコイン→イーサリアム)
-
マイニング報酬を受け取った
これらすべて「課税対象」です。つまり、「現金化していないから大丈夫」ではありません。
■ 課税される利益の計算方法
課税対象となるのは、「取得費+必要経費」を引いた“利益(所得)”部分です。
たとえば、次のような取引をした場合:
-
1BTCを300万円で購入
-
数ヶ月後に500万円で売却
→ このときの所得は「500万 - 300万 = 200万円」
なお、複数回取引がある場合には「移動平均法」または「総平均法」によって取得費を計算する必要があります。
■ 仮想通貨で商品購入・他通貨への交換も課税対象
「ビットコインでPCを買った」「ETHをUSDTに交換した」――これらもすべて、“利用時点の時価”で利益が出ていれば課税対象です。
つまり、保有中の通貨を“使った瞬間”に、あなたは「売った」ことになるのです。
例:
-
1ETHを10万円で取得
-
それを使って15万円相当のNFTを購入
→ 所得:15万円 − 10万円 = 5万円(課税対象)
■ マイニング・ステーキング報酬も所得
仮想通貨を得る手段が売買だけとは限りません。以下のようなケースも「課税対象」となります:
-
マイニング:その時点の時価で「雑所得」
-
ステーキング報酬:時価で受領時点の所得計上
-
エアドロップ:原則、時価ベースで課税される可能性あり(内容次第)
■ よくある注意点
1. 取引履歴の収集を怠らない
-
海外取引所・国内取引所・DeFi…あちこちで取引していると、全体の損益が見えなくなります。
-
取引履歴の自動集計ツールを活用し、定期的に整理しておきましょう。
2. 経費の計上ルールを理解する
仮想通貨に関する経費は、基本的に「利益を得るために直接要した費用」のみ認められます。
-
〇:取引手数料、ウォレット管理料、コンサル料など
-
✕:「寝不足で栄養ドリンクを買った」は不可。残念ながら“精神的損耗費”は経費にはなりません。
3. 赤字との通算・繰越はできない
雑所得は、原則として他の所得との損益通算ができず、赤字の繰越も不可です。
つまり、前年に仮想通貨で200万円損したとしても、翌年500万円の利益が出ればそのまま課税対象になります。
税務上、過去の苦しみには冷たいのです。
■ まとめ|仮想通貨と税金は、切っても切れない関係
仮想通貨は自由で分散化された世界の象徴です。
どれだけスマートにトレードしていても、申告を忘れればその帳尻は必ず合わされます。
-
雑所得としての課税区分
-
売却・交換・利用・報酬すべてが課税対象
-
正確な記録の保持と損益計算が必須
仮想通貨で利益が出た方、今後出そうな方は、早めに税理士や専門家にご相談いただくことで、リスクを最小限にしつつ、正確な申告が可能になります。