税理士ブログ
エステサロン経営者のための税金・会計入門
はじめに
こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。
エステサロンを経営するあなた。
お客様のお肌やボディを美しく仕上げるプロである一方、
ご自身の「税務や会計」は後回しになっていませんか?
この記事では、エステサロン経営に特有の税務・会計ポイントを4つに分けて解説します。
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顧客ターゲット戦略(経営方針)
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料金の前払い処理(収益計上)
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設備投資の考え方(減価償却)
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改装費用の取扱い(資本的支出 or 修繕費)
「キレイの裏には、地味な経理がある」——そんな現実も、プロの視点でわかりやすく解説していきます。
① エステサロン業の顧客ターゲットについて
〜“全員に売れる”は、誰にも売れない〜
会計と関係ないようで、実は大アリなのが顧客ターゲットの設定です。
例えば…
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【20代女性】⇒ ニキビケア・毛穴洗浄
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【30〜40代女性】⇒ 小顔・美白・ブライダル対策
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【50代以上女性】⇒ たるみ・リフトアップ・アンチエイジング
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【男性】⇒ ヒゲ脱毛・肌質改善・美容意識の高い層向け
このように年齢・性別・ライフイベントに応じたメニュー構成や価格帯を意識することで、
「売上の安定化」と「無駄な広告費削減」に直結します。
💡ターゲットを明確にすることで、必要な設備投資や施術単価の設定、売上計画がよりリアルになります。
これは後述する会計処理や設備投資にも大きく影響します。
② 料金一括前払いの会計処理について
〜“回数券”は現金だけど、すぐに売上にはしない〜
エステ業界では、「○回分をまとめて購入(チケット制)」や「月額定額制」など前払い制度が一般的です。
しかしこのお金、全額すぐに売上にはできません!
● 会計処理の原則:「未収益の繰延」
例:
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10回コース(1回1万円)を10万円で前払い
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現時点ではまだ2回しか施術していない
👉この時点での売上は2万円だけ。
残りの8万円は「前受金」として処理し、施術ごとに売上に振り替えていきます。
💡なぜこうする?
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会計は“実態主義”
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「サービスを提供した分だけ売上とする」が基本
税務上も、役務提供が完了したタイミングで収益認識するのが原則です。
📌注意点:
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月末時点での「施術未済分」は繰延処理
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返金規定がある場合、その処理も要注意
③ 設備投資について
〜美顔器は経費?資産?税務署も気になってます〜
高性能な脱毛機、美顔器、ベッド、レジ、空調機器など、サロンには多くの設備投資が発生します。
ここでの会計処理が適切でないと、経費の過少計上 or 税務調査の対象になりかねません。
● 30万円未満:一括で経費OK(少額減価償却資産)
【法人・青色申告の個人事業主】であれば…
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取得価額が30万円未満の設備は
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年度内で**全額を経費処理(損金算入)**できます!
※合計300万円までの上限あり(中小企業者等)
● 30万円以上:固定資産にして減価償却
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原則:法定耐用年数に従って、毎年分割して経費にします
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美顔器:5年
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マッサージベッド:8年
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空調機器:15年 など
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💡注意点:
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購入時の送料や設置費用も「取得価額」に含める
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領収書は分けて保管を(混在すると判断しづらくなる)
④ 店舗改装費用について
〜“壁紙”が経費になるか資産になるかの壁〜
サロンの魅力は、内装や空間演出にかかっています。
ですが、店舗の改装費用には「資本的支出」と「修繕費」の区別が必要です。
● 修繕費(=経費)とは
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壊れた設備の修理
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古くなった壁紙・床材の張替え
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塗装の塗り直しなど
👉 機能の維持・原状回復が目的
👉 税務上、全額をその年の経費にできる
● 資本的支出(=資産)とは
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新たな機能を加える
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見た目のグレードアップ(美容目的)
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元より豪華になる変更
👉 減価償却資産として、数年にわたって費用化
🧾判断のカギ:
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金額が20万円以上なら“資本的支出”と判断されやすい
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“明らかに豪華にした”なら資産処理が安全
📌領収書や請求書の内訳明細は細かく分けてもらいましょう!
おわりに
エステサロン経営は、お客様の満足と美しさを叶えるとても素敵なお仕事です。
だからこそ、その裏側の「数字の管理」や「税務処理」もプロとして整えておきたいところ。
✍️まとめ:サロン経営の税務・会計ポイント
| テーマ | ポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 顧客ターゲット | 売上戦略に影響 | 売上予測・原価率にも連動 |
| 前払い会計 | 前受金処理が必須 | サービス提供ベースで収益認識 |
| 設備投資 | 30万円未満は一括OK | 30万円以上は減価償却 |
| 改装費用 | 修繕費 or 資本的支出 | 内容の明細がカギ |
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