税理士ブログ
塗装工事業の税務、きっちり仕上げましょう!
はじめに
こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。
「塗装は完成してなんぼ」「現場がすべて」というのが塗装業の誇り。
でもその影で、税務処理をおろそかにしてしまう方も少なくありません。
この記事では、塗装工事業を営む個人事業主・法人向けに、
税務で気をつけたい4つのテーマを取り上げて解説します。
どれも税務調査でも突っ込まれやすい“ひび割れやすいポイント”ですので、ぜひ最後までご覧ください。
① 工事業の収益計上金額について
塗装工事業の収益計上は、「どのタイミングで売上に計上するか」が重要です。
ここを間違えると、利益がブレたり、税務調査で指摘を受けたりすることになります。
● 原則は「工事完成基準」
塗装工事業は原則として、「工事完成基準」で収益を認識します。
つまり…
✅ 工事が完了したタイミングで売上を計上するのが基本です。
たとえば、
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3月30日に工事が完了
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請求書は4月5日に発行
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入金は4月末
この場合、売上は3月(期末)に計上する必要があります。
● 完成してないけど作業が進んでいる? ⇒「部分完成基準」は原則NG
建築工事など大規模な長期工事では「工事進行基準」が使えるケースもありますが、
塗装工事のような案件では、原則として完成基準で処理します。
🚧 注意!
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「入金ベース」で計上してしまうと、実際とズレが出ます。
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納期のズレが月をまたぐ場合は要注意!
② 外国人労働者の給与等の源泉所得税について
塗装工事業では、技能実習生や留学生アルバイトなど、外国人労働者が増えてきています。
しかし、彼らに支払う給与等については、源泉所得税の特例や例外が多いため注意が必要です。
● 「非居住者」か「居住者」かで課税が違う
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原則として来日1年未満の者は「非居住者」
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非居住者に給与を支払う場合、20.42%の源泉徴収が必要(住民税なし)
💡 技能実習生や特定技能の外国人でも、要件を満たせば「居住者扱い」になります。
その場合は通常の日本人と同じ源泉徴収(扶養控除等申告書を提出すれば低い税率)でOKです。
📝 やるべき対応:
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在留資格・入国日・雇用契約の確認
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扶養控除等申告書の提出有無の管理
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マイナンバーの適切な取得と保管
③ 専属外注先との交際費について
工事現場では、専属で仕事をお願いしている外注業者との関係が密接になります。
仕事終わりに食事を共にしたり、打ち上げをすることもあるでしょう。
ただし、その飲食費用や手土産代などが「交際費」として経費になるかは、少し複雑です。
● 「交際費=誰に対して?」がカギ
法人の場合:
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外注先(取引先)への接待・贈答 ⇒ 交際費
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ただし、「継続的に従属的な関係がある」場合は福利厚生費として認められないこともある
個人事業主の場合:
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そもそも交際費の区分がない
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業務に関連した飲食費等なら「必要経費」として認められるが、「私的交際」は不可
💡 税務署は「親しい仲にも証拠あり」を求めてきます。
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誰と?
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何の目的で?
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金額は?
⇒ 領収書の裏にメモを残しておくのが有効です。
④ 消費税簡易課税制度における塗装業の事業区分
塗装工事業者で消費税の簡易課税制度を利用している方も多いと思います。
この制度では、事業の区分ごとに「みなし仕入率」が異なります。
しかし、「うちは何事業になるの?」と迷う方が少なくありません。
● 塗装工事業は“第3種事業(建設業)”
✅ みなし仕入率:70%
つまり、売上の30%を消費税の課税対象利益として計算するイメージです。
● よくある勘違い
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「材料を売ってるから“卸売業”では?」
→ 工事の請負をしている以上、建設業に該当します -
「職人に外注してるから“サービス業”では?」
→ 実態は建設業(請負)であり、第3種で正解
💡 複数の業種を兼ねる場合は、「売上割合が高いもの」で判定します。
🚨 注意!
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不適切な区分適用は税務調査で追徴の対象に
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インボイス制度の影響で、簡易課税を選ぶメリット・デメリットの再確認が必要
おわりに|塗っても剥がれない“正しい税務”を
塗装は仕上がりが命。
税務も仕上がりが命です。
経費の計上漏れ、源泉徴収の誤り、売上のズレ…
そのどれもが*塗装より落ちにくいトラブル”になりかねません。
✅ 工事の完了タイミング
✅ 外国人雇用の源泉処理
✅ 交際費と経費のボーダーライン
✅ 簡易課税の事業区分
これらを正しく処理することで、安心して経営に専念できます。
最後に
現場に即したアドバイス、経費の落とし方、節税のコツ、なんでもご相談ください。

