税理士ブログ
寿司店経営者のための“経営&税金ネタ帳”
はじめに:寿司屋のカウンターの裏にも、税理士はいる。
こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。
「板前は包丁、経営者は電卓が命」——
そんな言葉があってもおかしくないくらい、寿司店の経営には“数字”がつきものです。
食材費、人件費、家族の給与、消費税、外国人スタッフの税金対応……。
それらすべてが、うまい寿司を握りながらも避けて通れない“税務”のネタです。
この記事では、寿司店の現場に沿った税務知識を、顧客・経費・アルバイト・家族給与まで幅広く解説します。
① 寿司店の顧客ターゲットについて:経営戦略=税務戦略の始まり
まず、経営の基本は「誰に売るか」。
例えば以下のようなターゲット層が考えられます。
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地元密着型のファミリー向け寿司店
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観光客ターゲットのインバウンド寿司
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ビジネス層狙いのランチ重視型寿司
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完全紹介制の高級寿司カウンター
顧客ターゲットが変わると、当然ながら売上の波、経費の内容、取引先の種類も変わります。
結果として、帳簿や経費計上の仕方、消費税の課税区分にも影響を及ぼします。
👓たとえば…
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観光客中心なら外国語対応レジ・案内板などが必要になり、減価償却資産や開業費として計上可能。
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高級寿司なら接待需要も多く、接待交際費の範囲の理解が重要。
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ランチ営業を強化するなら、フードデリバリーやテイクアウト時の消費税の扱いにも注意が必要です。
💡ポイント:
経営戦略を練ることは、税務戦略を設計することでもあります。
② 消費税簡易課税について:原価率が高い寿司屋は“選択”が命!
寿司屋の消費税申告において非常に重要なのが「簡易課税制度」。
簡易課税とは?
通常、消費税は「預かった消費税-支払った消費税」で計算しますが、
簡易課税では業種ごとにみなし仕入率を適用することで、
実際の支出額にかかわらず計算できる制度です。
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飲食業の仕入率:60%
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簡易課税が使えるのは、前々年の課税売上が5,000万円以下の事業者
寿司店における判断ポイント
寿司店は食材原価が高めです。
例えば、マグロ・ウニ・いくらなどを多用する高級店は、
実際の仕入率が70〜80%になることも。
この場合、簡易課税を選択すると「損をする」可能性があります。
逆に、原価が低く抑えられているランチ重視型の寿司店などでは、簡易課税で有利になるケースも。
💡税理士の視点から一言:
「節税のための“ネタの仕入れ”」なんてバカな話が出ないように、原価率の把握と申告方式の選択は慎重に!
③ 外国人(非居住者)アルバイトの源泉所得税について
寿司屋の現場では、技能実習生や留学生アルバイトが働くケースも増えています。
税務上の注意点
非居住者(日本に住所も1年以上の滞在もない人)への給与は、
原則として20.42%の源泉徴収が必要です。
ただし、以下のような例外や注意点もあります。
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留学生であっても、滞在期間・在留資格によっては「居住者」扱いになる。
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滞在期間が1年以上になった時点で、源泉区分を変更する必要あり。
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非居住者の交通費支給などにも源泉がかかる場合あり。
💡要チェック:
外国人スタッフの「在留カード」「就労資格証明書」を必ず確認し、
税務上の区分を明確にしておきましょう。
④ 家族に支払う給料について:寿司屋は“家族経営”が多いからこそ要注意!
寿司屋の経営では、奥様がレジ、息子が厨房補助、おばあちゃんが洗い場…という風景は珍しくありません。
税務上の家族給与のルール(個人事業主の場合)
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青色申告専従者給与制度を使うことで、経費にできる
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条件:
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生計を一にする配偶者・親族
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事業に専従している
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税務署への届出が必要
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金額は「合理的かつ相当な金額」であること
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たとえば「奥さんに年収800万円」としても、
実態として週に数時間レジを打つだけなら、
税務署に否認される可能性もあります。
💡法人化している場合は?
法人の場合は、役員としての役員報酬または従業員としての給与になります。
ただし、こちらも「業務実態に見合った金額」であることが大前提です。
まとめ:
税金や労務の処理は、寿司を握るような“感覚”や“勘”では通用しません。
帳簿、税制、届出、源泉、給与設計……
細かな数字の積み重ねが、経営の安定を生むのです。
寿司店経営の税務でよくある相談
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どのタイミングで法人化すべき?
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消費税のインボイス制度でどう対応する?
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家族経営における給与と社会保険の設計は?
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食材費や店舗改装費の処理方法は?
🧾最後に:
税理士は「申告だけする人」ではありません。
お客様の店舗の未来を一緒に考え、経営と税務、両方を握れる税理士に、ぜひご相談ください。