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理士ブログ

“労務管理の落とし穴”とその処方箋

投稿:2025.10.14  更新日:2025.09.19

こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。

経営者の皆さん、「税金」には敏感でも、

「労務管理」になると途端に“他人事”になっていませんか?

ですが、労務管理は人の出入りだけでなく、

税務・社会保険・助成金…あらゆる経営数値と直結しています。

今回は、そんな労務管理の基本を5つの切り口で解説します。


① 人事労務関係書類の整備について

「社長、労務ファイル…Excelひとつで済ませてませんか?」

労働基準監督署の調査や、助成金の申請、あるいは社員とのトラブル発生時に、

「書類がない=アウト」になるケースは多々あります。

必ず整備しておきたい書類

  • 労働契約書・雇用契約書(条件明示の義務)

  • 就業規則・給与規程(常時10人以上の事業所は届出義務)

  • 36協定(時間外労働・休日労働の前提)

  • 入社時誓約書・身元保証書

  • 育児・介護休業の規程(実は法律で必須)

これらが無いと、退職トラブル時に「言った・言わない」の水掛け論へまっしぐら。

労働トラブルの弁護士費用は節税対象になりますが、

そもそも節税より平和な職場が欲しいのが本音でしょう。


② 従業員の定着率について

「採用よりも、辞めさせない方が100倍お得です」

採用コストは今や一人あたり数十万円。

面接・教育・OJT…すべてが“投資”です。

それを数ヶ月で辞められたら、まさに減価償却もできない“損金”扱い。

定着率を上げるための仕組みづくり

  • 定期面談・フィードバック制度

  • キャリアパスの提示(社内で昇進・昇給の見える化)

  • ライフスタイルに応じた柔軟な働き方(時短・在宅・副業許可など)

  • 福利厚生の見直し(社宅、食事補助、資格手当等)

税務的にも、一定の福利厚生は経費化可能であり、「社員の満足度UP+節税」にもなります。


③ 労働保険について

「年度更新、忘れてませんか?」

労働保険とは、雇用保険と労災保険の総称です。

労働者を一人でも雇用したら、必ず加入義務が生じます。

年に一度の「年度更新」もお忘れなく。

雇用保険のポイント

  • パート・アルバイトでも週20時間以上かつ31日以上の見込みがあれば加入対象。

  • 雇用保険料率は業種で異なるので要確認。

労災保険の注意点

  • 正社員・パート・役員を問わず、業務中・通勤中の事故には労災が適用

  • 役員は原則対象外ですが、特別加入制度もあります。


④ 社会保険について

「厚生年金、高いですよね。でも…逃げ道はありません」

社会保険は、健康保険・厚生年金・介護保険などのセットです。

法人であれば、社長ひとりでも加入義務があります。

加入漏れがあると…

  • 税務調査や年金機構の調査で、過去2年分の遡及徴収が来ることも。

  • 未加入を「節税」と捉えると、後に延滞金&ペナルティが痛手。

対策:報酬設計の見直し

  • 役員報酬の分割(賞与併用)や、社宅・福利厚生の活用で、社会保険料の負担をコントロール。

  • 中小企業退職金共済の加入で、老後対策+損金算入が可能。


⑤ 時間外手当について

「残業代は出してる“つもり”ではNG」

“みなし残業制”や“固定残業代制”の誤解が多く、

「基本給に含まれている」では済まないのが残業代の怖さです。

税務上の論点:

  • 未払残業代が税務調査で指摘された場合、追加支給額は過年度分として損金算入可。

  • ただし、過大な計上や根拠の曖昧な引当金は否認リスク

対策:

  • 就業規則・雇用契約書でみなし残業の明記(時間・金額・清算方法まで)

  • 月次での労働時間管理、勤怠システムの導入

税務&IPO上、未払いが蓄積したままだと“爆弾”になります。


まとめ

税理士の仕事は、単なる帳簿の整理ではありません。

人にまつわる数字を整理し、会社の成長を支えること。

  • 労務管理の体制が整っていれば、税務上のリスクも減る

  • 書類・制度・給料設計がしっかりしていれば、従業員の定着率も上がる

  • トラブルが少ない職場は、余分な顧問弁護士費用も減らせる

労務と税務、両方をあらかじめ両方を見通していれば、

「人の問題で税金が増える」ことも、「お金の問題で人が辞める」ことも防げるのです。

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