税理士ブログ
「その決算書、銀行が見てるのは“そこ”じゃない!」〜借入審査に強い決算書の作り方〜
こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。
今回のテーマは「借入申請のとき、金融機関が本当に見ている決算書のポイント」。
中小企業の経営者の方にとって、融資の成功は事業の浮沈を左右する重大事項。
にもかかわらず、提出された決算書が「これ…通すの勇気いるな…」と思われるケースが少なくないのです。
本記事では、財務コンサルティングの視点を交えて、
金融機関が納得する決算書作成のコツをわかりやすくお伝えします。
【1】「黒字=安心」とは限らない?銀行が見るのは利益より“実態”
よくある誤解のひとつが、「黒字にしておけば融資が通りやすい」というもの。
もちろん赤字決算よりは好印象ですが、金融機関が注目しているのは単なる「利益」ではなく、
実態に即した財務の健全性です。
たとえば、「売上高が前年の2倍。でも粗利率が半減」。
営業努力の成果に見えるかもしれませんが、
銀行の目には「利益の質が悪化している=無理してる?」と映ることも。
【2】役員貸付金・仮払金は、銀行ウケ最悪の常連さん
金融機関が嫌う勘定科目、代表格は役員貸付金と仮払金です。
特に、役員貸付金が大きい会社に対しては「この会社、お金貸したら社長が先に使いそう…」と警戒されます。
これらの項目は、「会社の資金管理が甘い」と判断される要因となり、審査に大きくマイナス。
対策としては、決算前に役員報酬等で適切に処理するか、明確な返済計画を用意することが大切です。
【3】節税と融資は両立できる?実は“逆効果”な場合も
「税金を抑える=いいこと」と思われがちですが、借入を検討しているタイミングでは要注意。
過度な節税により、利益が圧縮されてしまうと、「返済原資がない会社」と見られる可能性があります。
一時的な利益調整は効果的に見えるかもしれませんが、
銀行は「数年分の推移」や「税引後利益の動向」なども見ており、
短期の節税テクニックが逆に信頼を損ねることもあります。
ここで必要なのが、財務と税務のバランスを熟知した税理士のアドバイスです。
単に節税ありきではなく、「将来の融資や成長を見据えた計画的な利益確保」が肝心です。
【4】資産の見せ方と、減価償却の“さじ加減”
意外と見落とされがちなのが、固定資産や減価償却の扱い方。
銀行側は、固定資産の内容や償却の状況から、将来の設備投資や資金繰りの計画性を推し量っています。
特に「償却がされていない資産」や「数年前に取得した車両が未償却」などは不信感の原因になります。
また、「資産性のないもの(例:不要な会員権)」がBSに載っている場合も要注意です。
【5】金融機関に刺さる「補足資料」とは?
決算書そのものも重要ですが、プラスアルファの「補足資料」が融資成功を左右します。
たとえば、
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借入の目的を明確に記した資金使途計画書
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今後の収支見込みや事業計画
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代表者の経歴書や、過去の実績がわかる資料
などは、金融機関の信用を得るために非常に有効です。
【6】まとめ:財務は「筋トレ」、税理士は「パーソナルトレーナー」
借入時の決算書は、「数字の化粧」ではなく「数字の健康診断書」。
一時的に見栄えを整えるだけでは、金融機関の信頼は得られません。
私たち税理士は、税務申告だけでなく、財務の筋力強化=継続的な体質改善をサポートする立場でもあります。
ぜひ、決算書が必要になる前からご相談ください。
“筋トレ”は継続が命です(実際の筋トレはさぼりがちです)。