税理士ブログ
その8%は本当に軽いのか? 軽減税率の落とし穴
2019年10月、消費税率10%への引き上げと同時に導入された軽減税率制度。
名前は「軽減」と優しそうですが、内容は複雑です。
今回は、そんな軽減税率制度の基本から、「え、それも?」な注意点まで解説します。
■ 軽減税率の基本:対象は「食料品」と「新聞」
まず、軽減税率が適用されるのは以下の2種類です。
-
飲食料品(酒類・外食を除く)
→ スーパーで買う食材やコンビニのおにぎりなど:税率8% -
定期購読の新聞(週2回以上発行)
→ 朝刊・夕刊などの定期宅配:税率8%
ただし、同じ商品でも買い方や提供の仕方で税率が変わるので、正直なところ「わかりにくい」です。
たとえば:
-
イートイン → 10%
-
テイクアウト → 8%
■ 外食とテイクアウトの線引きは“椅子”で決まる?
軽減税率の混乱ポイント第1位は「外食とテイクアウトの違い」です。
● 外食(10%)
-
店内で食事をする場合
-
屋台やフードコートのテーブル使用も「外食」と判定
● テイクアウト(8%)
-
持ち帰りで食べると伝えた場合
-
車内や公園のベンチならOK(椅子の所有者による)
要するに、どこで、誰の椅子で、どの意志で食べるかで税率が変わるんです。
ちなみに「立ち食い」はどうなの?という質問に対し、国税庁の回答は「原則外食です」。
■ 会計処理や請求書での対応は?
軽減税率制度の導入により、帳簿や請求書も一手間増えました。
【帳簿上の注意点】
-
8%と10%を区別して記帳
-
税区分を間違えると、仕入税額控除の否認リスクあり
【インボイス制度との関係】
2023年からのインボイス制度により、軽減税率の記載ミスはさらに重大化しています。
-
適格請求書発行事業者は、軽減税率の対象商品ごとに8%明記が必須
-
「税率だけ書いて中身がわからない」はインボイスとして不適格
■ 実務でよくある落とし穴
以下のような「やってしまいがちミス」にも注意が必要です。
◎ 社内で弁当を配布 → 税率?
社員に弁当を配る場合、福利厚生費扱いでも「外食扱い」で10%になるケースがあります。
ポイントは、「提供場所と形態」。
◎ 飲み物だけ税率が違う?
水は軽減税率適用の8%、一方アルコールのウイスキーは10%
◎ ケータリングは外食
出張シェフやケータリングは、調理+配膳を伴うため「外食」=10%です。
■ まとめ:軽減税率は“優しさ”か“試練”か
制度の目的は、「生活必需品の税負担を和らげること」でした。
しかし実際は、帳簿・会計・レジ・インボイス処理…現場に多くの混乱をもたらしました。
軽減税率を“正しく扱う”ためには:
-
何が8%、何が10%かの把握
-
帳簿・請求書の記載ルールの理解
-
インボイス制度と合わせた運用の徹底
が欠かせません。
「たった2%の違いで?」と思われるかもしれませんが、累積すると大きな差になります。
当事務所では、軽減税率制度に関するご相談、会計処理、インボイス対応まで幅広く支援しております。
「これは8%?」「これってレジで聞くしかないの?」と迷ったら、ぜひお気軽にご相談ください。