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雑収入とは?|つい安易に使ってしまいがちな勘定科目の正しい理解と注意点

投稿:2025.06.30  更新日:2025.05.29

日々の経理業務の中で、「これはどの勘定科目で処理すればいいんだろう?」と迷う場面は少なくありません。
そんなとき、便利に思えるのが「雑収入」という勘定科目です。しかし、この科目は便利な一方で、使い方を誤ると税務調査で指摘されるリスクもあるため、正しい理解が不可欠です。

この記事では、雑収入の基本的な定義から、よくある具体例、仕訳時の注意点、税務上のポイントまで、実務に役立つ形で解説します。


■ 雑収入とは何か?基本的な定義

「雑収入」とは、本業とは直接関係のない、臨時的・例外的に発生する収益を処理するための勘定科目です。
つまり、売上高や受取利息など、明確に他の勘定科目で処理すべきものに当てはまらない収益を一時的に処理する際に使います。

雑収入は、損益計算書(P/L)の「営業外収益」または「営業外収益のうちその他」に分類されることが多く、企業の通常の営業活動とは直接結びつかない収入であることがポイントです。


■ 雑収入に該当する主な例

雑収入に該当することの多い収益には、次のようなものがあります。

  • 従業員の私用電話料金の精算額

  • 保険の解約返戻金(事業用でない場合)

  • 補助金・助成金(用途不特定の場合)

  • 古紙・不要品の売却代金

  • 取引先からのキャンペーン報奨金(営業外)

  • 賃貸借契約の更新料・礼金(本業でない場合)

  • 固定資産売却時の端数利益

  • 預り金の残余精算分(返還義務なし)

これらは、本業の売上や金融収益とは異なるため、「売上高」「受取利息」などでは処理しづらいが、収益であることに変わりはないという位置付けになります。


■ 雑収入の仕訳例

たとえば、従業員の私用電話代として3,000円を回収した場合の仕訳は以下のとおりです。

(借方)現金 3,000円 (貸方)雑収入 3,000円

このように、あくまで企業の本来の業務とは関係のない収益を一時的に受け取った場合に使用されます。


■ 注意点①:他の科目で処理すべき収益との混同

「雑収入」は非常に広義に使えるように見えますが、本来は他の勘定科目を使うべき収益を、安易に雑収入に含めることは避けるべきです。

たとえば:

  • 受取利息 → 原則「受取利息」で処理

  • 保険金収入 → 内容に応じて「保険差益」「雑益」などで処理

  • 補助金 → 目的や支出先により「雑収入」「特別利益」「補助金収益」などで使い分けが必要

税務署は「雑収入=あいまいな処理」と見なすことがあり、詳細な内訳や背景を確認される可能性があります。


■ 注意点②:課税関係の把握が必要

雑収入は、法人税の課税対象となる収益です。
特に補助金や助成金などは、税務上の扱いが異なる場合があるため、適切な判断が求められます。

たとえば:

  • 雇用調整助成金 → 原則として課税対象(雑収入で処理)

  • 持続化給付金 → 課税対象

  • 被災に伴う見舞金等 → 非課税となる場合もあり(個別判断が必要)

「課税対象かどうか」「消費税の課税取引かどうか」も合わせて確認することが重要です。


■ 注意点③:雑収入の内容を内訳で明示すること

雑収入は内容が不明瞭になりやすいため、元帳や内訳書にて内容をきちんと記載しておくことが大切です。
税務調査では「雑収入の中身を教えてください」と質問されることが多く、説明できないと課税リスクが高まります。

【例】雑収入 100,000円の内訳:

  • 古紙売却益:30,000円

  • 雇用助成金:50,000円

  • 保険返戻金:20,000円

このように整理しておくことで、説明責任を果たしやすくなります。


■ まとめ

「雑収入」は便利な勘定科目である反面、「何でも入れていい科目」ではありません。
あくまで、他の明確な勘定科目に該当しない臨時的・例外的な収益を処理するために使うものであり、その内容・税務上の位置づけ・課税可否をきちんと把握することが重要です。

当事務所では、日常の仕訳処理や勘定科目の選定についてのご相談も承っております。雑収入の内容に迷った際は、ぜひ一度ご相談ください。経理処理の正確性が、貴社の信用と納税リスク管理に直結します。

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