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法人税の節税策~倒産防止共済の基本的な考え方と注意点~

投稿:2025.06.03

法人経営において「利益が出た年には税金が多くかかる」という悩みはつきものです。その対策として注目されるのが節税策ですが、節税とは単に税金を減らすことだけでなく、将来を見据えた資金繰りやリスク管理と一体で考えることが重要です。

本記事では、中小企業にとって実践しやすい代表的な節税策の一つである「中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)」を中心に、法人税の節税に関する基本的な考え方と注意点をわかりやすく解説します。


■ 法人税の節税とは?

法人税は、企業の利益(課税所得)に対して課税される税金です。つまり、経費が増えれば課税所得が減り、法人税も軽減されます。

節税とは、「合法的かつ計画的に支出を行い、結果として税負担を抑えること」を意味します。ただし、一時的な節税が将来の税負担を増やすリスクもあるため、「節税=支出の先送り」であることも理解しておく必要があります。


■ 中小企業倒産防止共済とは?

正式名称は「中小企業倒産防止共済制度」で、独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営する制度です。取引先が倒産した際に、連鎖倒産を防ぐための資金を迅速に借り入れできる共済制度であり、かつ有効な節税策の一つとしても知られています。


■ 倒産防止共済の主な特徴とメリット

◎ 掛金は全額損金算入可能

毎月5,000円〜20万円まで、年最大240万円(上限累計800万円)の掛金を支払うことができ、その全額を損金(法人の経費)として計上できます。これにより、利益を圧縮し、法人税の節税が可能です。

◎ 任意で解約でき、返戻金もある

40か月以上掛金を払い込めば、解約時にほぼ全額(100%)が戻ってくるため、「一時的に税金を繰り延べる手段」としても使えます。

◎ 万が一の際には借入も可能

取引先の倒産などにより売掛金が回収不能となった場合、最高8,000万円までの無担保・無保証・無利子(手数料あり)で資金を借り入れできます。これにより資金ショートを防ぐセーフティネットとしても機能します。


■ 活用の流れと会計処理(例)

たとえば、利益が多く出た年度に以下のように掛金を拠出した場合:

  • 年間240万円(毎月20万円)を掛金として支出

  • その年の課税所得が240万円分圧縮され、法人税等が約80万円節税されるケースも

この掛金は「保険料」として損金算入され、解約返戻時には「雑収入」として益金計上されます(=将来の課税対象)。


■ 注意点①:あくまで「繰り延べ型」の節税である

倒産防止共済による節税は、利益を将来に繰り延べる「タイミング調整」型です。掛金は損金になりますが、解約時には返戻金が益金として戻るため、いずれは税金を支払う必要があります。

特に、将来の解約時に多額の返戻金が益金として計上されると、その年の利益が急増し、税負担が大きくなることもあります。解約タイミングを戦略的に考える必要があります。


■ 注意点②:短期間での解約は元本割れのリスクあり

掛金を12か月未満で解約した場合、返戻金はゼロです。また、12か月〜39か月未満の解約では掛金総額の8割未満しか戻らないこともあるため、短期の節税目的での利用は適しません。

最低でも40か月以上の拠出が見込める企業が対象となります。


■ 注意点③:資金繰りやキャッシュフローへの影響

掛金は支出であるため、実際に**キャッシュアウトが生じます。**そのため、赤字の年度に無理に加入しても、資金繰りを悪化させる恐れがあります。

加入前には、現在の資金状況や将来の返戻金受け取り時期、解約タイミングなどをシミュレーションしておくことが重要です。


■ その他の中小企業向け節税策(併用例)

倒産防止共済のほかにも、以下のような節税策がよく使われます:

  • 小規模企業共済への加入(個人事業主・役員の退職金準備)

  • 生命保険の活用(定期保険などの一部損金算入)

  • 決算賞与の活用(一定条件で損金計上)

  • 固定資産の購入による減価償却費の計上

  • 役員退職金の支給(事前準備と議事録整備が必要)

ただし、これらも税務上の取り扱いやリスクが異なるため、総合的に判断することが重要です。


■ まとめ

中小企業倒産防止共済は、「節税」「資金繰り」「リスク管理」という3つの視点で活用できる有効な制度です。
しかし、その効果は加入のタイミングや解約時期によって大きく変わるため、事前に十分なシミュレーションと計画が不可欠です。

当事務所では、倒産防止共済を含めた法人税の節税対策について、貴社の利益状況や将来計画に応じた具体的なご提案を行っております。お気軽にご相談ください。

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