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法人税法に準じる売上計上のタイミングとは?

投稿:2025.05.26  更新日:2025.05.21

法人税の計算において、**売上の「計上時期(認識時点)」**を適切に判断することは非常に重要です。
売上の時期を誤ると、利益の計上タイミングがずれ、法人税額に影響を与えるだけでなく、税務調査における否認リスクにもつながります。

この記事では、法人税法に準じた売上計上の基本的な考え方と、実務上で特に注意すべきポイントについて、わかりやすく解説します。


■ 売上計上の原則:実現主義とは?

法人税法上、売上の計上は**「実現主義」**に基づいて行います。
実現主義とは、企業が提供した財やサービスが完成・引渡され、顧客に対して請求できる状態になった時点で売上を計上するという考え方です。

たとえば、以下のようなタイミングが基準になります:

  • 商品の販売 → 出荷日または納品日

  • サービスの提供 → 完了日または検収日

  • 工事契約等 → 完成基準または工事進行基準(一定条件下)

この「実現した時点」で売上を計上することで、法人税法の趣旨に沿った収益認識が可能になります。


■ 実務上の売上計上時期の判断基準

売上計上のタイミングは、業種や契約形態によって微妙に異なることがあります。以下に、代表的なケースをいくつか紹介します。

◎ 商品の販売の場合(物販業)

  • 出荷基準:商品を出荷した時点で売上を計上

  • 納品基準:顧客の手元に届いた時点で計上

  • 検収基準:顧客による受け入れ(検収)完了時に計上

→ 通常は出荷基準が多いですが、契約書や取引慣行で検収基準が採用されていることもあります。

◎ サービス提供業

  • 一般的には**役務提供完了日(=作業完了日や報告書提出日など)**をもって売上計上

  • 長期にわたる契約(顧問契約など)では、**月割りでの計上(期間按分)**が必要な場合もあります

◎ 工事・制作業(建設業、ソフトウェア開発など)

  • 完成基準:工事や制作が完了し引渡した時点で売上を計上

  • 進行基準:工事の進捗度に応じて段階的に売上を認識(原則として工期が1年超かつ契約金額が一定以上の場合に適用

→ 会計基準上は進行基準が推奨される場合もありますが、法人税法上では一定条件を満たす場合に限って適用されます。


■ 計上タイミングの違いが税務に与える影響

売上の計上時期が早すぎたり遅すぎたりすると、以下のような問題が発生します。

  • 早く計上しすぎる → 実際の提供がない段階で利益が先行し、税金を過大に支払う可能性がある

  • 遅く計上する(期ズレ) → 実際にはその期に実現した利益を翌期以降に繰り延べたとみなされ、税務調査で指摘される可能性が高くなる

税務調査では、「出荷記録」「検収書」「請求書」「契約書」などの**証憑の整合性をもって計上根拠が確認されます。**帳簿と実態が乖離している場合、売上の修正・加算(追徴課税)の対象となることもあります。


■ 注意すべき会計処理と運用ポイント

  1. 契約書や取引条件を明文化する
     → 売上計上の基準(検収基準、引渡基準など)を明記しておくとトラブル防止になります。

  2. 会計処理と税務処理の整合性を確認する
     → 会計上は収益認識基準(2021年から適用)により進行基準を適用していても、法人税法では完成基準しか認められないケースもあるため、帳簿外に別途調整が必要です。

  3. 証拠資料の保管と整理を徹底する
     → 売上の正当性を証明できるよう、契約書・納品書・検収書・請求書・メール記録などの保存が重要です。


■ まとめ

法人税法における売上計上のタイミングは、「実現主義」に基づき、取引の実態に応じた計上が求められます。
業種や契約形態によって判断が分かれる場面もあるため、安易に「請求書を発行した月だから売上」といった処理は避け、契約・実績・証拠の整合性を持って対応することが重要です。

誤った売上計上は税務調査でのリスクとなりかねません。当事務所では、取引内容に応じた売上計上のアドバイスや、法人税申告に伴う帳簿の確認なども承っております。
疑問点や不安がある場合は、お気軽にご相談ください。

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