税理士ブログ
ボカロPと税金の話
こんにちは、税理士の阿部です。
YouTubeやニコニコ動画、音楽配信サービスなどでオリジナル楽曲を発表し、多くのファンを獲得している「ボカロP(プロデューサー)」のみなさま。
「音楽は自由に創るもの」というポリシーで活動されている方も多いと思いますが、税務の世界はリズムやハーモニーより“記帳と申告”が基本です。
今回は、ボカロPとして活動されている方に向けて、税務上の基本事項と注意点をお伝えしていきます。
■ ボカロPの収入って、どう扱うの?
まず、ボカロPとして得られる主な収入の種類を整理してみましょう。
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楽曲の販売収入(CD、配信など)
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YouTubeなどの広告収入(Google AdSense)
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楽曲のライセンス料や使用料(著作権使用料)
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ライブやイベント出演料
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グッズ販売収入
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クラウドファンディングによる支援金
これらはすべて課税対象です。
■ 雑所得?事業所得?判定の分かれ道
個人の音楽活動による所得は、原則として「雑所得」または「事業所得」に分類されます。
【雑所得】
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副業や趣味に近い活動
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年間での収益が少額、または単発的な活動
【事業所得】
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専業でボカロPを行っている
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継続的な収益がある
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楽曲提供や受託制作を定期的に行っている
事業所得になると青色申告が可能で、最大65万円の控除や赤字の繰越などが可能になります。
■ 経費として認められるもの
事業としての活動であれば、必要経費も申告できます。ボカロPに関連する経費の例を見てみましょう:
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ボカロソフトやDAW(作曲ソフト)購入費
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プラグイン・音源の購入費
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パソコンやオーディオインターフェース
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楽器、マイク、録音機材
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イラストや動画編集など外注費
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スタジオ利用料、交通費
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通信費(自宅Wi-Fiやアップロード関連)
■ クラウドファンディングと税金
近年増えているのが、アルバム制作やライブ開催のためのクラウドファンディング。
これも、支援金を受け取った時点で“収入”となり課税対象になります。
返礼品(CD、グッズなど)を用意した場合には、その原価や発送費用などを経費として処理できます。
■ 確定申告の基礎知識
ボカロPとして年間20万円以上の雑所得がある場合、原則として確定申告が必要です(給与所得と合算される場合など)。
特にYouTubeや海外プラットフォーム経由の収入は、日本国内で税務署に申告する義務があります。
「ドル建てで振り込まれていたから気づかなかった」は通じません。
■ 忘れがちな注意点
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収入は入金ベースでなく「発生ベース」で記帳
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著作権使用料の振込時期に注意(前年分が翌年に振り込まれるなど)
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売上の管理と経費の証憑(レシート・請求書)保存を忘れずに
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配信プラットフォームからの手数料差引きにも要注意(純収入ではない)
■ まとめ|自由な創作を守るために、税務もクリアに
ボカロPの活動は、音楽・映像・デザインなど多彩な分野にまたがり、創作の自由度が高い反面、税務上はやや複雑になりがちです。
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収入区分(雑所得・事業所得)の判断
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経費の正確な把握
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海外取引・クラウドファンディングの扱い
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確定申告の準備と実行
これらを丁寧に管理することで、安心して創作に打ち込む環境を整えることができます。
当事務所では、音楽クリエイターやボカロP向けの税務相談・記帳・申告代行も行っております。