税理士ブログ
それ、申告したら少し戻るかも?医療費控除の意外と見落とされがちな話
こんにちは。税理士の阿部です。
医療費控除は、確定申告の中でも比較的メジャーな制度ですが、実際には適用できるのに使われていないケースも少なくありません。
その理由の多くは、「対象になると思っていなかった」「領収書がどこかへ消えた」など、ちょっとした勘違いと、冷蔵庫の奥のような油断です。
今回は、そんな「医療費控除」に関する基本事項と税務上の注意点を解説していきます。
■ 医療費控除とは?
医療費控除とは、自分や家族のために支払った医療費のうち、一定額を超えた分を所得から差し引くことができる制度です。
【控除額の計算式】
その年中に支払った医療費の合計額 - 保険金等で補填された金額 - 10万円(※)= 医療費控除額
(※総所得が200万円未満の人は「所得の5%」が基準)
例えば、年間で医療費を35万円支払い、うち保険金で5万円戻ってきた場合:
→ 控除額は 35万円 - 5万円 - 10万円 = 20万円(所得控除)
還付金として“現金で戻る”わけではなく、“税金が減る”効果があります。
■ 対象となる“医療費”とは?
医療費控除の対象になる支出は意外と広く、以下のような費用が含まれます:
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医師・歯科医師による診療、治療費
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通院にかかった交通費(公共交通機関)
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医薬品の購入費(※治療目的のもの)
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出産費用、入院費用、入院時の食事代など
※対象外となるものの例:
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美容整形費用(医療目的でないもの)
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健康診断のみ(結果異常なしの場合)
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マイカー通院のガソリン代や駐車場代
ここで注意したいのは、「“薬”っぽいから医療費」ではないという点。
たとえば、「腰が痛くて貼った湿布はOK」でも、「栄養ドリンク」は対象外です。
■ 誰の分まで対象になるの?
医療費控除の対象となるのは、自分と“生計を一にする家族”の医療費です。
この「生計を一にする」の定義が少し分かりづらいのですが、同居していなくても、仕送りなど経済的支援をしていれば対象になります。
例:仕送りをしている遠方の学生の子どもの医療費 → 控除OK
例:たまたま実家で見つけた祖母の治療費レシート → 控除NG(※支払者が異なるため)
ちなみに「ペットの手術代」は感情的にはかなり医療っぽいですが、法律上は“物の修理”に近い扱いになるので、当然ながら対象外です。
■ 確定申告時の手続き方法
【1】医療費控除の明細書の提出
平成29年分以降、領収書の提出は不要になり、「医療費控除の明細書」を添付する形式に変わりました。
領収書は自宅で5年間の保管義務があります。
【2】集計方法の選択
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医療費ごとにまとめる
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病院・薬局別にまとめる
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「医療費通知(健康保険組合からの明細)」を使って記入する方法もOK
Excelやクラウド会計ソフトで管理しておくと、確定申告時の負担が大幅に減ります。
■ よくある注意点
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控除の対象は「支払った年」
→ 翌年のカード引き落としでも、支払日ベースで集計する -
保険金等で補填された金額の控除漏れに注意
→ 生命保険・共済金・医療費給付などは控除対象額から引く必要あり -
歯科矯正やインプラントの判断は“目的”による
→ 治療目的ならOK、美容目的ならNG
■ まとめ|申告漏れで「損して健康」はもったいない
医療費控除は、年間を通じてこまめに支出を記録しておくことで、“見落としやすい節税”をきちんと活用できる制度です。
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医療費の定義を正しく理解する
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対象となる家族・支払者を明確にする
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保険金や補填金との関係に注意する
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領収書はきちんと分類・保管しておく
特に家族が多い方や、年に数回まとまった通院がある方は、医療費控除での節税効果が無視できません。
当事務所では、医療費控除を含めた個人の節税相談、確定申告サポートを行っています。
「医療費、思ったよりかかってたかも…?」という方は、お気軽にご相談ください。