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その“手数料”、税務署も見てます。派遣手数料と税金の関係

投稿:2025.08.11  更新日:2025.06.03

こんにちは。新宿区税理士の阿部です。

「派遣社員を使ったけど、あの“手数料”ってどういう扱いなの?」
「人材派遣会社を運営してるけど、税務上の処理って何に注意すればいいの?」

そんな疑問をお持ちの企業担当者・個人事業主の皆さまへ。
今回は、「派遣手数料」に関する税務上の基本と注意点について、わかりやすく解説していきます。


■ そもそも「派遣手数料」とは?

派遣手数料とは、人材派遣会社が、派遣先企業に対して請求する「サービス料」のことです。
内容としては、以下の2つに大別されます:

  1. 派遣スタッフへの給与や社会保険料(原価)

  2. 人材派遣会社の取り分であるマージン(利益)

たとえば、1人あたり月額30万円の派遣料金のうち、20万円は派遣スタッフの給与で、10万円がマージンという構成になることが一般的です。

この「派遣手数料」、経理処理上も税務上もシンプルなようで、意外と落とし穴が潜んでいます。


■ 派遣を「受ける側」の税務処理:経費計上のポイント

派遣を受ける側、つまり派遣先企業は、派遣会社からの請求書をもとに支払いを行います。

この支出は、原則として「外注費」または「派遣費用」として経費計上します。

【処理時の注意点】

  • 消費税の仕入税額控除対象になるため、インボイス対応済の派遣会社かどうかを要確認

  • 明細書に給与部分とマージンが明記されていることが望ましい(内部資料としても役立つ)

また、決算期のタイミングでは、「受けたけど未払いの手数料」や「派遣済みだが請求未到着分」が発生することがあります。

この場合には、未払金処理・見越し計上が必要になります。


■ 派遣を「出す側」の税務処理:売上計上と消費税

派遣する側、つまり人材派遣会社側は、派遣手数料を売上として計上します。

【処理のポイント】

  • サービス提供月を基準に売上計上する(発生主義)

  • 消費税課税取引のため、課税売上高として扱う

  • インボイス制度に対応し、適格請求書を発行する必要あり(2023年10月以降)

インボイス制度の施行後、「ウチ、まだ登録してないんです…」が理由で契約終了となるケースも
まさに、マージンを得る前に信用が失われる事態も起きてしまいます。


■ マージン率と税務リスク

派遣業界では、厚生労働省が毎年「マージン率」の平均値を公表しています(全国平均は20~30%程度)。

派遣手数料が相場を大きく外れている場合には、税務署から「取引の適正性」についての確認が入ることもあります。

また、親族企業間での不自然な高額手数料や逆に異常な低額手数料は、「移転価格」や「過小評価」「利益操作」とみなされる可能性があるため注意が必要です。


■ 派遣と請負の違いにも注意!

派遣と請負は似て非なる契約です。

項目 派遣 請負
指揮命令権 派遣先 請負元
契約関係 派遣会社-派遣先 請負業者-依頼元
法的規制 労働者派遣法 民法・労働法(間接的)

これを曖昧にしておくと、労務トラブルと税務トラブルのダブルパンチに発展します。


■ まとめ

  • 派遣手数料は、受け手側にとっては経費・外注費、出し手側にとっては売上

  • 消費税やインボイス対応は両者に必要

  • 計上時期・マージン率・契約形式の正確な把握が重要

  • 派遣と請負の違いにも留意しよう

派遣という人材の流動性の裏には、税務処理の正確性が求められます。
「人を送る側」「人を受け入れる側」双方が税務上の役割を理解することが、スムーズな経営と信頼につながります。

当事務所では、人材派遣会社、受け入れ企業の両方に向けた税務アドバイス、契約書レビュー、インボイス対応の支援を行っております。

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