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音楽著作権と税金の話

投稿:2025.07.28  更新日:2025.05.29

こんにちは。税理士の阿部です。

作曲家や作詞家、アーティストの方にとって、音楽著作権は“財産そのもの”ともいえる大切な権利です。
そしてその著作権から得られる収入には、当然ながら税金が関わってきます。

この記事では、音楽著作権に関わる方が押さえておきたい、税務上の基本事項と実務上の注意点を解説します。


■ 著作権収入=“所得”です。避けられません。

音楽著作権により得られる収入は、原則として「著作権使用料」=「雑所得」または「事業所得」に分類されます。

  • JASRACやNexToneなどの管理団体を通じて支払われる使用料

  • 自ら販売した楽曲に関する収入

  • 楽曲の二次利用(CM・ゲーム・映画)での使用料

  • YouTubeでのコンテンツIDによる収益

これらすべて、所得です。


■ 雑所得か?事業所得か?…ここが大きな分かれ目

音楽著作権収入は、ケースによって「雑所得」か「事業所得」のいずれかになります。

【雑所得】

→ 副業レベル、または継続性・独立性が乏しい場合
例:本業は別にあり、たまに楽曲提供する程度

【事業所得】

→ 専業または職業的に音楽を継続的に提供している場合
例:作曲家・アーティストとして年間複数本の提供実績がある

事業所得になると、青色申告が使え、65万円の特別控除や赤字の繰越などが可能になります。

継続的な売上と経費がなければ“事業”とは認められません。


■ 著作権譲渡による収入の扱い

著作権を「譲渡」した場合、これは資産の譲渡として扱われ、譲渡所得または事業所得になることもあります。

  • 一時的に高額な収入が発生する場合

  • 永続的な使用権を他者に移転した場合

このような場合は、雑所得と分けて考える必要があるため、申告区分を間違えるとリスクがあります。

また、譲渡の際に一括で大きな金額を受け取った場合、「その年だけ爆上がり」→「税率も爆上がり」という悲劇が起こりかねません。


■ 経費にできるもの・できないもの

著作権収入が事業所得と認められた場合、さまざまな経費を控除できます。代表例としては:

  • 制作に使用した機材(パソコン、DAW、インターフェース等)

  • 楽器、譜面、スタジオ代

  • 関連書籍・音源購入費

  • セミナー・ワークショップの受講料

  • 広告宣伝費(HP制作・SNSプロモーション等)

  • 交通費、打ち合わせ費用(ただし、懇親会はほどほどに)


■ 所得の変動と税額の備え

著作権収入は、不定期かつ変動が激しいという特徴があります。
特にYouTubeや配信で“バズった”場合、急に数十万~数百万円の振込が来ることも。

しかし、翌年にはそのすべてに対して税金が課されます。

  • 所得税

  • 住民税

  • 国民健康保険

  • 場合によっては消費税(課税事業者の場合)

つまり、「バズったら、その後税金でもう一度バズる」という現象が起こりがちです。

対策としては:

  • 年間の収入変動をざっくり予測

  • 毎月一定額を“納税用預金口座”に積立てる

  • 節税制度(青色申告、iDeCo、小規模共済)を活用

など、収入が安定しないからこそ、先を見越した設計が重要です。


■ まとめ|著作権は“文化”だけでなく“課税対象”でもある

音楽著作権は、創作者にとって大切な資産であり、活動の成果そのもの。
しかしその分、税務上の取り扱いは非常に繊細で、誤解や放置が後のトラブルにつながることも少なくありません。

  • 所得区分(雑所得/事業所得/譲渡所得)を正しく判断

  • 経費の判断に注意

  • 収入の変動に合わせた納税準備

  • 節税制度の積極的な活用

これらを押さえておくことで、音楽活動を安心して続けるための「財務の地盤」が整います。

当事務所では、音楽・芸術関係のクライアント様向けに、著作権収入やその税務処理に関するサポートを多数行っております。

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