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ピアノもギターも、帳簿の中では資産です!

投稿:2025.06.26  更新日:2025.05.29

こんにちは。税理士の阿部です。

音楽教室を運営されている方や、演奏業務を行う個人事業主・フリーランスの方の中には、業務の一環として楽器を購入されるケースもあるかと思います。
そのような際、「楽器は経費として処理できるのか」「減価償却の対象になるのか」といったご質問をよくいただきます。

今回は、楽器の減価償却に関する基本的な考え方と実務上の注意点について解説します。


■ 楽器は減価償却資産になるのか?

税務上、取得価額が10万円以上で、使用可能期間が1年以上の資産は「減価償却資産」として扱われます。
楽器もこの基準を満たす場合、「器具および備品」として減価償却の対象となります。

ただし、事業との関連性が明確であることが前提です。
※「ストレス解消のために買ったドラムセット」は残念ながら対象外です。気持ちはわかります。


■ 減価償却の基本

減価償却とは、高額な資産を購入した際に、その費用を数年に分けて経費計上する会計処理です。
例えば50万円のピアノを購入した場合、購入年に全額を経費にするのではなく、定められた耐用年数に従って毎年少しずつ費用化していきます。

いきなり全額計上してしまうと、帳簿上は「音が鳴るたび赤字」状態になってしまうかもしれません。


■ 楽器の耐用年数(器具備品に該当)

楽器の種類 耐用年数
アップライトピアノ/グランドピアノ 5年
電子ピアノ・シンセサイザー 5年
ギター(アコースティック/エレキ) 5年
管楽器(サックス・クラリネットなど) 5年
ドラムセット 5年

上記はあくまで標準的な例です。使用状況や形式により異なる場合があります。


■ 少額減価償却資産の特例(青色申告者向け)

青色申告をしている中小企業・個人事業主は、1点あたり30万円未満の資産であれば、購入年に全額を経費計上できます(年間300万円まで)。

  • 25万円の電子ピアノ → 購入年に一括で経費処理OK

  • 35万円のバイオリン → 通常通り耐用年数に基づいて分割償却

楽器店で「もう一つ高いモデルを…」と迷ったとき、「税務的には今こっちのほうが軽いんだよな」とつぶやいているお客様を見ると、つい応援したくなります。


■ 経費処理する際の注意点

1. 事業との関連性の明示

楽器が減価償却資産として認められるには、「事業の用に供していること」が明確でなければなりません。

  • 音楽教室で生徒に使用させる

  • イベント等で演奏活動を行う

  • 飲食店等の演出として設置する

これらに該当すれば問題ありませんが、趣味としての購入や、演奏の実態がない場合は経費として認められません。

2. 領収書・証拠書類の保存

購入時の領収書(品目・金額・日付・店名の記載)をしっかり保存することが重要です。
また、業務での使用状況を写真などで記録しておくと、税務署からの確認にも対応しやすくなります。

3. 修理・調律費用の取り扱い

楽器のメンテナンス(調律、部品交換など)にかかる費用は、その都度経費に計上可能です。
ただし、機能向上などの目的で大規模修理を行った場合は、資本的支出として再度減価償却対象になることがあります。


■ リース・レンタルの楽器について

リース契約やレンタル契約で楽器を使用している場合は、減価償却は行いません。
その代わり、支払ったリース料・レンタル料は支払時点での経費として処理します。


■ よくあるご質問

Q. 自宅で仕事と趣味を兼ねて使っている楽器は?
→ 使用割合に応じた按分が必要です。仕事での使用が全体の60%であれば、60%相当分を経費として処理します。

Q. セットで購入した楽器は?
→ 1点ずつの取得価額が明確であれば、個別に判断して減価償却処理を行います。明細が曖昧な場合は、按分または一括処理の判断が必要となります。


■ まとめ

楽器は、事業との関係性が明確であれば、減価償却資産として会計・税務上も適切に処理できます。
正確な処理を行うことで、経費計上の妥当性が高まり、税務リスクの軽減にもつながります。

ただし、趣味と事業の境界が曖昧な場合や、高額な楽器を扱う場合は判断が難しいケースもあります。
判断に迷う場合は、ぜひ専門家にご相談ください。

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