税理士ブログ
福利厚生費を“経費にできる5選”〜税務上の注意点を含めて〜
こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。
「福利厚生費」──これは会社の経費として認められる一方で、
要件を満たさないと“給与扱い”されてしまう落とし穴もある分野です。
そこで今回は、代表的な5つの福利厚生の種類について、
税務上の注意点を押さえながら掘り下げていきます。
① 社宅・住宅手当:住まいと税金の絶妙な関係
会社が従業員に社宅を提供したり、住宅手当を支給する場合、
福利厚生費として経費にすることが可能です。
ただし、社宅の家賃負担が“相場より著しく安い”と、従業員に対して給与課税される可能性があります。
✅ 税務上の注意点:
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「賃貸契約は会社名義」であること
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「従業員が負担する家賃」が一定の基準(賃貸料相当額)以上であること
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住宅手当を現金で支給する場合は給与課税されることがほとんど
② 永年勤続者への報奨:感謝の気持ちは経費になる?
10年・20年と長年働いてくれた従業員に対して表彰や記念品を渡す行為。
これは福利厚生費の代表格です。
ですが、「現金で渡す」「高額すぎるプレゼント」「対象者が限られすぎている」などの場合には注意が必要です。
✅ 税務上の注意点:
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永年勤続表彰の対象はおおむね10年以上の勤続者
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記念品の価値は概ね10万円以内が妥当
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「金一封」など現金を渡すと給与扱いになってしまう
③ 健康診断費用:会社が払う健康投資
従業員の健康を守るための定期健康診断は、福利厚生費として全額経費処理が可能です。
法定健康診断だけでなく、オプション検査なども、条件次第で経費になります。
✅ 税務上の注意点:
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全従業員を対象に実施していること
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一部の役員や上位職だけで高額人間ドックなどを受けていると、給与課税リスク
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扶養家族分は対象外となるのが基本
④ 食事の支給:ランチタイムにも税務の目が
社員食堂の運営や仕出し弁当の提供、昼食代補助などは、従業員への福利厚生の一環として扱われることが多いです。
ただし、一定のルールに従っていないと給与扱いになるので、見極めが必要です。
✅ 税務上の注意点:
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社員食堂や弁当配布等の場合、「従業員の負担額」が食事の原価の半分以上 or 1食あたりの課税基準額(現行4,000円)以下であること
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全従業員が利用できること
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現金で支給する昼食手当は給与課税対象
⑤ 社員旅行の費用:楽しい旅も税務との同行
年に1回程度、福利厚生の一環として社員旅行を実施する会社も多いですね。
この費用も福利厚生費として経費処理可能ですが、
条件を満たさなければ“給与”とみなされる可能性があります。
✅ 税務上の注意点:
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旅行の目的が業務ではなく慰安であること
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全従業員が参加できる形であること
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旅行期間が4泊5日以内であること
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従業員が負担した費用が少なすぎないか(全額会社負担は要注意)
【まとめ】福利厚生費は“制度設計”と“運用の平等性”がカギ
福利厚生費は、従業員の満足度向上と節税効果の両立ができる、非常に有用な経費項目です。
しかし、税務上は「公平性」や「業務関連性」などの要件を満たしているかが厳しくチェックされます。
✔ 書面の整備(社内規程や利用ルール)
✔ 全従業員を対象とした運用
✔ 金額や内容が“社会通念上”妥当かどうか
これらをきちんと整えておけば、税務調査の際にも安心です。