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理士ブログ

やさしく解説する「靴屋(小売業)の税務・会計の基本」

投稿:2026.06.08  更新日:2026.04.29

はじめに

こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。

靴屋の経営は、仕入れ・在庫・値引き・返品・ネット販売・季節変動…と、

見た目以上に“数字のクセ”が強い商売です。

特に、売上の計上タイミング(店頭とネットで違う)、在庫の適正水準、

消費税の簡易課税(小売業=第2種)、そして自家消費(家族や自分で履く靴)の扱いは、

税務調査でも質問が出やすいテーマです。

この記事では、靴屋さんが「儲かっているのにお金が残らない」

「在庫が増えて資金繰りが苦しい」とならないために、

会計・税務の勘所を4つの目次に沿って解説します。


① 収益計上(引き渡し基準、ネットは出荷基準)

〜売上は“入金日”ではなく“お客様に渡した日”で考える〜

靴屋の売上は基本的に「商品販売」です。会計の世界では、商品売上は原則として、

商品を引き渡した時点(お客様へ渡った時点)で計上するのが基本です。

これを「引き渡し基準」と呼びます。

1) 店頭販売:基本は引き渡し=その場で売上

店頭販売では、レジで会計してその場で商品を渡すため、通常は

  • 売上計上:販売日(引き渡し日)
  • 入金:同日(現金・カード等)
    となり、処理はシンプルです。

注意点は、カード決済の場合、入金が後日になること。

この場合も売上は販売日で、カード手数料は経費として処理するのが基本です。

「入金日で売上を立てる」と、月次がズレて利益が読みにくくなります。

2) ネット販売:原則は“出荷基準”で整理すると整う

ネット販売では、「注文日」「決済日」「出荷日」「到着日」「返品日」など日付が増えます。

ここで最も重要なのが、売上計上の基準を社内で統一することです。

実務でよく採用されるのが「出荷基準」。
つまり、

  • 売上計上:発送した日
  • 返品があれば:返品受領日で売上取消/返品処理
    という形です。

ネット販売で“到着日”を基準にしようとすると、配送遅延や受け取り遅延などで管理が煩雑になります。

出荷日なら自社でコントロールでき、帳簿と物流データの突合も簡単です。

3) 返品・交換は「売上取消」と「在庫戻し」がセット

靴屋の特徴として、サイズ違いやイメージ違いで返品・交換が一定割合発生します。
このとき重要なのは、

  • 売上を取り消す(返品)
  • 在庫を戻す(返品商品)
    をセットで処理することです。売上だけ取り消して在庫が戻っていない、というズレが起きると、棚卸のタイミングで数字が崩れます。

4) 売上の“締め日”ルールを決める

ネットと店頭の両方をやっている靴屋さんほど、月末に「売上の締め」が大切になります。おすすめは

  • 店頭:販売日で締め
  • ネット:出荷日で締め
  • 返品:返品受領日で締め
    というルールを固定し、毎月同じ基準で管理すること。これで月次利益が安定します。

② 適正在庫

〜靴屋の利益は“仕入れ”ではなく“在庫の回転”で決まる〜

靴屋の経営で一番効くのは、実は「売上」より「在庫」です。

在庫は資産ですが、言い換えると「現金が形を変えたもの」。

在庫が増えれば、現金が減り、資金繰りが苦しくなります。

一方で、在庫が少なすぎると欠品して販売機会を逃します。

つまり、靴屋の経営は適正在庫のバランスゲームです。

1) 適正在庫とは何か:目安は“回転日数”

適正在庫を考えるとき、感覚ではなく指標を持つと強いです。
代表的なのが在庫回転日数(在庫が何日分あるか)です。

  • 在庫回転が早い:売れている、資金繰りが軽い
  • 在庫回転が遅い:滞留している、値下げ・処分が増える

靴は季節性が強いので、季節の終わりに在庫を抱えると、

翌年は売りにくくなります(モデルチェンジや流行もある)。

だからこそ「売り切る設計」が重要です。

2) 在庫の3分類で、判断が速くなる

靴屋の在庫は、ざっくり次の3つに分けると管理が楽です。

  • A:定番(常に売れる)
  • B:季節(春夏・秋冬で動く)
  • C:トレンド・限定(当たれば速いが外れると残る)

この分類をするだけで、仕入の方針が明確になります。
「定番は欠品させない」「季節は早めに売り切る」「トレンドは小ロットで回転重視」――これが基本です。

3) 滞留在庫は“評価”と“現実”を早めに揃える

売れ残りが増えると、帳簿上は資産として残りますが、実際は「処分しないと現金化できない在庫」です。

決算では、棚卸によって期末在庫を確定させますが、

滞留品が多い場合は、値下げや処分を含めて現実的な販売可能性を見直すことが大切です。

会計上も税務上も、状況に応じて評価の検討が必要になる場面があります(詳しい判断は個別ケースによります)。

4) 適正在庫のための“実務習慣”

  • 月1回の棚卸(少なくとも主要品番)
  • サイズ別の動きを見る(靴はサイズで滞留が起きる)
  • 仕入は「売れ筋+補充」を基本に
  • 値引きは“遅すぎない”(遅いほど値下げ率が大きくなる)

在庫管理は地味ですが、靴屋の利益体質を一段上げる“最短ルート”です。


③ 簡易課税の取り扱い(小売業に該当するため第2種)

〜靴屋は基本「小売業」。簡易課税は相性が良いケースも多い〜

消費税の申告では「本則課税」と「簡易課税」のどちらを選ぶかが重要です。

簡易課税は、実際の仕入税額を積み上げる代わりに、業種ごとの“みなし仕入率”で計算する制度です。

靴屋は一般的に小売業に該当するため、簡易課税では第2種事業となります。

1) 第2種=小売業:基本整理

仕入れた靴をそのまま販売する事業は、小売業として第2種に該当するのが通常です。

(店舗販売、ネット販売ともに「仕入商品をそのまま売る」形が中心なら第2種。)

2) 簡易課税が合うかは“数字で試算”

簡易課税は事務が楽になりますが、得か損かは事業内容によります。
例えば、

  • 仕入が多い(仕入率が高い)
  • 設備投資が大きい(改装、什器、POSなど)
    こういう局面では本則課税の方が有利なこともあります。

一方、靴屋は家賃・人件費など「仕入税額控除になりにくい支出」が大きい業態でもあるため、

簡易課税が向くケースも少なくありません。

結論はシンプルで、毎期(または制度選択時)に試算するのが最適です。


④ 自家消費

〜「自分で履く」「家族に渡す」を“売上ゼロ”で終わらせない〜

靴屋さんで意外と多いのが、自社で仕入れた靴を

  • 自分が履く
  • 家族が使う
  • 社員に渡す(社内使用)
    というケースです。これが「自家消費」の論点です。

1) 自家消費は“在庫が減る”ので、帳簿に反映が必要

在庫は資産です。自家消費で靴が出ていけば、在庫が減ります。

帳簿に何も記録しないと、棚卸時に帳簿と現物が合わなくなり、原因究明で時間が溶けます。

2) 基本の考え方:事業用か私用かで処理が変わる

  • 事業用(業務で使う):広告用・制服用・撮影用など、事業関連性が説明できれば経費処理の余地があります(内容に応じて科目整理)。
  • 私用(自分・家族の私物):原則として事業経費にはなりません。棚卸資産から私用へ振り替える形で整理します。

特に、私用の持ち出しを「仕入のまま」にしてしまうのは税務的に説明が苦しくなります。

ルールとして、社内で「持ち出し申請」「社内販売(従業員割引)」などの形を整えておくとスムーズです。

3) 社員への支給は“福利厚生”の論点も

社員に靴を支給する場合、業務上必要なもの(制服・安全靴等)なら比較的整理しやすい一方、

私的利用が強い場合は給与課税の論点が出ることがあります。

ここも「目的」「対象範囲(全員か一部か)」「金額の妥当性」を整えるのが基本です。


まとめ:靴屋の会計は「基準を決めて、毎月同じにする」が最強

靴屋の税務・会計で押さえるべき要点は次の4つです。

  1. 売上は引き渡し基準。ネットは出荷基準で統一すると整う
  2. 適正在庫は回転で見る。滞留在庫は早めに手を打つ
  3. 簡易課税は小売業=第2種。得か損かは必ず試算
  4. 自家消費は在庫が減る以上、帳簿にも反映して“ズレ”を防ぐ

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