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決算の9割は「まだ/もう」の整理でできている。~未収・未払・前受・前払~

投稿:2026.08.24  更新日:2026.04.29

はじめに

こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。

決算が近づくと、こんな言葉が急に増えます。

「未収」「未払」「前受」「前払」――そして「見越し」「繰延」。

聞き慣れないと難しそうに見えますが、実はやっていることはとてもシンプルです。

ポイントは “まだ/もう” の整理。

  • もう売上は発生しているのに、まだ入金していない → 未収
  • もう費用は発生しているのに、まだ支払っていない → 未払
  • もう入金したけど、まだサービス提供していない → 前受
  • もう支払ったけど、まだサービスを受けていない → 前払

これを決算で正しく整理すると、利益が“それっぽく”ではなく“正しく”出ます。

逆に、この整理がズレると、黒字のはずが赤字に見えたり、

税金が無駄に増えたり、銀行の評価が落ちたりします。

この記事では、
①収益・費用の見越し
②見越しの具体例
③収益・費用の繰延
④繰延の具体例
の順で、「未収・未払・前受・前払」を決算実務に落ちる形で解説します。


① 収益・費用の見越し

〜“もう発生した”のに、請求・支払がまだのものを拾う〜

見越しとは、決算日時点で すでに発生している収益・費用 を、

請求や支払いの有無に関係なく当期に計上する考え方です。

会計は「発生主義」が原則なので、「入金したか/払ったか」ではなく、

「当期に発生したか」で利益を計算します。

見越しには、代表的に次の2つがあります。

  • 未収収益(未収金):収益は発生しているが、まだ請求・入金がない
  • 未払費用(未払金):費用は発生しているが、まだ請求・支払がない

1) 未収(未収収益・未収金)の考え方

未収とは、当期の売上に対応する請求権がすでに発生しているのに、請求や入金が翌期になるものです。

典型は、月末締めの請求書が翌月発行・翌月入金になるケース。

ポイントは「当期の売上なのか?」です。

  • 納品済み
  • 役務提供済み
  • 検収済み
    など、売上計上の条件が整っていれば、入金がなくても当期売上として未収計上します。

2) 未払(未払費用・未払金)の考え方

未払とは、当期の費用として発生しているのに、請求書が来ていない、支払が翌期になる、というものです。

典型は、

  • 電気代・ガス代の請求が翌月
  • 外注費の請求が翌月
  • クレジットカード利用分の引落が翌月
    など。

未払を計上しないと、当期の費用が小さく見えて利益が過大になり、税金も増える可能性があります。

特に決算期末の“締め漏れ”で多いので、チェックリスト化がおすすめです。

3) 見越しをやる目的は「当期の利益を正しくする」

見越しをしないと、

  • 収益は翌期にズレる
  • 費用も翌期にズレる
    という“ズレズレ会計”になります。
    会社の成績表(P/L)が歪むと、
  • 税金が増える
  • 銀行説明が弱くなる
  • 社長の判断が遅れる
    など、地味に効いてきます。

② 見越しの具体例

〜未収と未払は、まずこの10個を押さえれば強い〜

ここでは、現場でよく出る見越しの具体例を挙げます。

「うちにもある!」が多いはずです。

未収の具体例(未収収益)

  1. 月末に納品したが請求書は翌月発行
  2. システム保守・顧問料が月額だが、請求は翌月
  3. 完了した工事・役務の請求が翌月
  4. サブスクの当月分が翌月回収
  5. 成功報酬型の報酬が成果確定したが入金が翌月

実務のコツ
未収は「請求書の控え」より「納品・検収・役務完了の証拠」で判断します。

売上の根拠は、現場の完了記録にあります。

未払の具体例(未払費用)

  1. 水道光熱費(使用月は当期、請求は翌月)
  2. 通信費(締日が月末とズレる)
  3. 外注費(納品は当期、請求が翌月)
  4. クレジットカード利用分(当期使用、引落は翌月)
  5. 社会保険料(当月分を翌月控除する会社が多い)
  6. 決算賞与(支給決定しているが未払い)※要件確認が重要
  7. 家賃の未払(支払日が翌月初)
  8. リース料(締日ズレ)
  9. 旅費交通費(立替精算が翌月)
  10. 税理士・弁護士等の報酬(作業は当期、請求は翌月)

実務のコツ
未払は「請求書が来てないから計上しない」が一番危険。

クレカ明細・作業報告・納品書・勤怠など、別証憑で拾います。


③ 収益・費用の繰延

〜“もう入金・支払した”のに、まだ当期のものじゃないを戻す〜

繰延は、見越しの逆です。

決算日時点で まだ発生していない収益・費用 を、当期の損益から外して翌期以降に回す考え方です。

繰延の代表は次の2つ。

  • 前受収益(前受金):入金したが、サービス提供は翌期
  • 前払費用(前払金):支払ったが、サービス提供は翌期

1) 前受(前受収益・前受金)の考え方

前受とは、まだ提供していないサービスの代金を先にもらっている状態です。

当期の売上にしてしまうと、利益が過大になります(売上だけ先に立つ)。

典型例:

  • サブスクや保守契約を年払いで受け取った
  • 研修・セミナー代金を事前に受領
  • 回数券・チケットを販売(提供はこれから)

この場合、入金は「前受金(負債)」として計上し、提供した分だけ翌期以降に売上へ振り替えます。

2) 前払(前払費用・前払金)の考え方

前払とは、まだ受けていないサービスの分まで先に払っている状態です。

当期の費用にしてしまうと、利益が過小になります(費用だけ先に計上)。

典型例:

  • 家賃を前払い
  • 保険料を年払い
  • システム利用料を半年払い
  • サブスクを年払い

この場合、支払時点では「前払費用(資産)」として計上し、月々費用に振り替えます。

3) 繰延は「利益調整」ではなく「期間対応」

繰延は、利益を良く見せるための小細工ではありません。

当期と翌期の費用収益対応を正しくするための“決算の基本動作”です。

ここが整うと、月次の数字も決算の数字も素直になります。


④ 繰延の具体例

〜前受・前払は「年払い」と「チケット」が鉄板〜

繰延でよく出るパターンは、ほぼ次の2つです。

  • 年払い(前受・前払)
  • 回数券・チケット(前受)

前受の具体例(前受収益)

  1. 年払いの顧問料・保守料
  2. 家賃収入を先にもらう(賃貸業)
  3. サブスクの年契約
  4. セミナー代金を事前受領
  5. 回数券・チケット販売(提供は今後)

実務のコツ
前受は「契約期間の切り方」が大事です。

月割りで振り替えるのか、サービス提供日で振り替えるのか、運用ルールを決めておくとズレません。

前払の具体例(前払費用)

  1. 火災保険・生命保険などの年払い
  2. 家賃・地代の前払い
  3. リース・レンタルの前払い
  4. システム利用料・クラウド利用料の年払い
  5. 広告費の前払い(掲載期間が翌期にかかる)

実務のコツ
前払は「支払日」ではなく「サービスの提供期間」で費用配分します。

支払った時点で全額費用にしない、が基本です。


まとめ:「未収・未払・前受・前払」は“決算の四天王”

最後に、今日の内容を超短く整理します。

  • 未収:もう売上は発生している、でもまだ入金がない(見越し)
  • 未払:もう費用は発生している、でもまだ支払っていない(見越し)
  • 前受:もう入金した、でもまだ提供していない(繰延)
  • 前払:もう支払った、でもまだ受けていない(繰延)

この4つが整うと、

  • 利益が正しくなる
  • 税金が適正になる
  • 銀行説明が強くなる
  • 社長の判断が速くなる
    という“良い連鎖”が起きます。

当事務所では、決算整理のチェックリスト作成、月次の見越し・繰延の運用設計、

会計ソフトの設定支援まで行っています。

「毎年ここで迷う」「未払が漏れる」「前受がぐちゃぐちゃ」など、気になる点があればお気軽にご相談ください。

決算は、仕組み化すると一気にラクになります。

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