税理士ブログ
決算の9割は「まだ/もう」の整理でできている。~未収・未払・前受・前払~
はじめに
こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。
決算が近づくと、こんな言葉が急に増えます。
「未収」「未払」「前受」「前払」――そして「見越し」「繰延」。
聞き慣れないと難しそうに見えますが、実はやっていることはとてもシンプルです。
ポイントは “まだ/もう” の整理。
- もう売上は発生しているのに、まだ入金していない → 未収
- もう費用は発生しているのに、まだ支払っていない → 未払
- もう入金したけど、まだサービス提供していない → 前受
- もう支払ったけど、まだサービスを受けていない → 前払
これを決算で正しく整理すると、利益が“それっぽく”ではなく“正しく”出ます。
逆に、この整理がズレると、黒字のはずが赤字に見えたり、
税金が無駄に増えたり、銀行の評価が落ちたりします。
この記事では、
①収益・費用の見越し
②見越しの具体例
③収益・費用の繰延
④繰延の具体例
の順で、「未収・未払・前受・前払」を決算実務に落ちる形で解説します。
① 収益・費用の見越し
〜“もう発生した”のに、請求・支払がまだのものを拾う〜
見越しとは、決算日時点で すでに発生している収益・費用 を、
請求や支払いの有無に関係なく当期に計上する考え方です。
会計は「発生主義」が原則なので、「入金したか/払ったか」ではなく、
「当期に発生したか」で利益を計算します。
見越しには、代表的に次の2つがあります。
- 未収収益(未収金):収益は発生しているが、まだ請求・入金がない
- 未払費用(未払金):費用は発生しているが、まだ請求・支払がない
1) 未収(未収収益・未収金)の考え方
未収とは、当期の売上に対応する請求権がすでに発生しているのに、請求や入金が翌期になるものです。
典型は、月末締めの請求書が翌月発行・翌月入金になるケース。
ポイントは「当期の売上なのか?」です。
- 納品済み
- 役務提供済み
- 検収済み
など、売上計上の条件が整っていれば、入金がなくても当期売上として未収計上します。
2) 未払(未払費用・未払金)の考え方
未払とは、当期の費用として発生しているのに、請求書が来ていない、支払が翌期になる、というものです。
典型は、
- 電気代・ガス代の請求が翌月
- 外注費の請求が翌月
- クレジットカード利用分の引落が翌月
など。
未払を計上しないと、当期の費用が小さく見えて利益が過大になり、税金も増える可能性があります。
特に決算期末の“締め漏れ”で多いので、チェックリスト化がおすすめです。
3) 見越しをやる目的は「当期の利益を正しくする」
見越しをしないと、
- 収益は翌期にズレる
- 費用も翌期にズレる
という“ズレズレ会計”になります。
会社の成績表(P/L)が歪むと、 - 税金が増える
- 銀行説明が弱くなる
- 社長の判断が遅れる
など、地味に効いてきます。
② 見越しの具体例
〜未収と未払は、まずこの10個を押さえれば強い〜
ここでは、現場でよく出る見越しの具体例を挙げます。
「うちにもある!」が多いはずです。
未収の具体例(未収収益)
- 月末に納品したが請求書は翌月発行
- システム保守・顧問料が月額だが、請求は翌月
- 完了した工事・役務の請求が翌月
- サブスクの当月分が翌月回収
- 成功報酬型の報酬が成果確定したが入金が翌月
実務のコツ:
未収は「請求書の控え」より「納品・検収・役務完了の証拠」で判断します。
売上の根拠は、現場の完了記録にあります。
未払の具体例(未払費用)
- 水道光熱費(使用月は当期、請求は翌月)
- 通信費(締日が月末とズレる)
- 外注費(納品は当期、請求が翌月)
- クレジットカード利用分(当期使用、引落は翌月)
- 社会保険料(当月分を翌月控除する会社が多い)
- 決算賞与(支給決定しているが未払い)※要件確認が重要
- 家賃の未払(支払日が翌月初)
- リース料(締日ズレ)
- 旅費交通費(立替精算が翌月)
- 税理士・弁護士等の報酬(作業は当期、請求は翌月)
実務のコツ:
未払は「請求書が来てないから計上しない」が一番危険。
クレカ明細・作業報告・納品書・勤怠など、別証憑で拾います。
③ 収益・費用の繰延
〜“もう入金・支払した”のに、まだ当期のものじゃないを戻す〜
繰延は、見越しの逆です。
決算日時点で まだ発生していない収益・費用 を、当期の損益から外して翌期以降に回す考え方です。
繰延の代表は次の2つ。
- 前受収益(前受金):入金したが、サービス提供は翌期
- 前払費用(前払金):支払ったが、サービス提供は翌期
1) 前受(前受収益・前受金)の考え方
前受とは、まだ提供していないサービスの代金を先にもらっている状態です。
当期の売上にしてしまうと、利益が過大になります(売上だけ先に立つ)。
典型例:
- サブスクや保守契約を年払いで受け取った
- 研修・セミナー代金を事前に受領
- 回数券・チケットを販売(提供はこれから)
この場合、入金は「前受金(負債)」として計上し、提供した分だけ翌期以降に売上へ振り替えます。
2) 前払(前払費用・前払金)の考え方
前払とは、まだ受けていないサービスの分まで先に払っている状態です。
当期の費用にしてしまうと、利益が過小になります(費用だけ先に計上)。
典型例:
- 家賃を前払い
- 保険料を年払い
- システム利用料を半年払い
- サブスクを年払い
この場合、支払時点では「前払費用(資産)」として計上し、月々費用に振り替えます。
3) 繰延は「利益調整」ではなく「期間対応」
繰延は、利益を良く見せるための小細工ではありません。
当期と翌期の費用収益対応を正しくするための“決算の基本動作”です。
ここが整うと、月次の数字も決算の数字も素直になります。
④ 繰延の具体例
〜前受・前払は「年払い」と「チケット」が鉄板〜
繰延でよく出るパターンは、ほぼ次の2つです。
- 年払い(前受・前払)
- 回数券・チケット(前受)
前受の具体例(前受収益)
- 年払いの顧問料・保守料
- 家賃収入を先にもらう(賃貸業)
- サブスクの年契約
- セミナー代金を事前受領
- 回数券・チケット販売(提供は今後)
実務のコツ:
前受は「契約期間の切り方」が大事です。
月割りで振り替えるのか、サービス提供日で振り替えるのか、運用ルールを決めておくとズレません。
前払の具体例(前払費用)
- 火災保険・生命保険などの年払い
- 家賃・地代の前払い
- リース・レンタルの前払い
- システム利用料・クラウド利用料の年払い
- 広告費の前払い(掲載期間が翌期にかかる)
実務のコツ:
前払は「支払日」ではなく「サービスの提供期間」で費用配分します。
支払った時点で全額費用にしない、が基本です。
まとめ:「未収・未払・前受・前払」は“決算の四天王”
最後に、今日の内容を超短く整理します。
- 未収:もう売上は発生している、でもまだ入金がない(見越し)
- 未払:もう費用は発生している、でもまだ支払っていない(見越し)
- 前受:もう入金した、でもまだ提供していない(繰延)
- 前払:もう支払った、でもまだ受けていない(繰延)
この4つが整うと、
- 利益が正しくなる
- 税金が適正になる
- 銀行説明が強くなる
- 社長の判断が速くなる
という“良い連鎖”が起きます。
当事務所では、決算整理のチェックリスト作成、月次の見越し・繰延の運用設計、
会計ソフトの設定支援まで行っています。
「毎年ここで迷う」「未払が漏れる」「前受がぐちゃぐちゃ」など、気になる点があればお気軽にご相談ください。
決算は、仕組み化すると一気にラクになります。

