税理士ブログ
公的年金を受給している方の確定申告ケース別ひとまとめ
はじめに
こんにちは!
東京都新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所、税理士の阿部です。
今回は、公的年金を受給している方の確定申告をケース別に解説したいと思います。
課税対象となる公的年金とは・・・
公的年金を受け取った場合、年金の種類や金額によって課税されるかどうかが決まります。
課税の対象となる公的年金は、国民年金(自営業者など)からの老齢基礎年金、
厚生年金(会社勤めの方など)からの老齢厚生年金、共済年金(公務員)からの老齢共済年金となります。
また、年金は主に老齢・障害・死亡した場合に受け取ることができますが、
課税対象となるのはそのうち老齢により受給したケースです。
受給者の立場を考慮し、障害及び死亡により年金を受給したときは非課税となっております。
金額面では、公的年金の雑所得の計算上、年金収入が65歳未満の場合は108万円超、
65歳以上の場合は158万円を超えなければ所得税は課税されません。
そのため源泉徴収もされません。
また、公的年金等の収入金額が400万円以下で、
かつ、その他の所得が20万円以下である場合には確定申告を省略できる制度もあります。
※その他の所得が20万円以下というのは、例えば給与所得は、「給与収入額-給与所得控除(65万円)=所得」で計算されるので、
収入が85万円を超えると確定申告は必要となります。
この確定申告不要制度は、
年金以外の所得が少額である納税者と国との双方の事務処理の手間を省くことを目的としたものです。
(地方自治体の処理は増えますが・・・)
しかし、確定申告が不要であっても、申告をすることで源泉徴収額の還付を受けることができる場合や、
住民税の申告が必要なケース、住民税だけでも申告しておくと有利なケースなどがあり少々複雑です。
それぞれのケースごとに分けて整理したいと思います。
本来は申告不要だが、確定申告をしたほうが有利なケース
・扶養人数などが年金計算上のものと異なるとき
・生命保険料控除、地震保険料控除を受けるとき
・医療費控除を受けるとき
・天引きされたものとは別に社会保険料を支払ったとき
※いずれも年金から所得税が源泉徴収されているときに限ります。
上記いずれかの場合に該当すると、
確定申告によって源泉徴収されていた金額が還付される可能性があります。
還付される金額はその年の源泉徴収税額が限度になりますので、
「公的年金等の源泉徴収票」に記載された源泉徴収税額を確認して、
確定申告をするかどうかを判断します。
住民税だけ申告したほうが良い場合
生命保険料などの各種控除は、所得税だけでなく住民税の計算においても適用されます。
そのため、所得税で申告不要を選択した場合であっても、
住民税について各種控除を受けようとするときは住民税だけ個別に申告をする必要があります。
以前まで確定申告をしており今年から不要制度を選んだケースなどでは注意が必要で、
各種控除を受けられないため住民税が高くなる可能性があります。
そもそもですが、所得税の確定申告をすると、その申告データが居住している市区町村へ流れていくため、
個別に住民税の申告をする必要はありません。
そのため、住民税でも各種控除を受けようとするときは、
所得税の確定申告を行うことで個別で申告する手間が省略できます。
住民税のみ申告しなければならないケース
「公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、その他の所得が20万円以下」の確定申告不要制度は国税である所得税の制度です。
その他の所得が生じている場合で、所得税の確定申告を省略したときは、個別に住民税の申告をしなければなりません。
また、個別に住民税を申告するときは、
各地方自治体の様式に従った申告書を手書きで作成しなければならないので手間にもなります。
先述しましたが、所得税の確定申告をすれば住民税を個別で申告する必要はありませんので、
あえて所得税の確定申告を行っておくというのも手立てとして考えられます。
その他のケース
金融機関からお金を借りるときや、行政サービスを受けるときなど確定申告書の控えを求められる場合もありますので、
借入の予定などがあるときはあえて確定申告を行うケースも考えられます。
おわりに
平成28年度の税制改正では、年金所得については大きな改正はありませんでした。
しかし、昨今の少子高齢化で年金受給者が増加していることを背景に、
今後の年金に関する税制を整理していくと与党から発表がありました。
年金所得者の確定申告についてはいくつかのパターンがあり複雑なので、
少しでも分かりやすい税制になればいいのですが・・・
最後までお読みくださりありがとうございます。
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