税理士ブログ
気付いたら時効だった!消滅時効による回収不能を事前に避けるための知識
はじめに
東京都新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所、税理士の阿部です。
今回は、消滅時効を事前に避けるために知っておきたいポイントについて解説したいと思います。
消滅時効とは・・・
事業上取引先と結んだ契約は原則的に守られるべきものです。
支払う側は期日までに決まった金額を支払うという債務を履行し、
受け取る側はお金を受け取る権利を行使することで約束を果たします。
しかしながら、取引先の資金繰り悪化などの様々な事情により支払いを受けることができず
そのまましばらく時間が経過してしまうことも往々にして起こりえます。
そのような場合に一定の期間が経過したあと、
支払う側から「時効期間が過ぎたから、代金は払わない」
と主張されると、その取引先に対して持っていた債権は消滅し、1円の回収もできなくなります。
これを消滅時効といい、債権の種類ごとにその消滅までの期間は定められています。
長い間放っておいて相手方に請求をせず、そのような「権利の上に眠るもの」は法律上保護しない
という考え方がこの制度の背景にあります。
つまり、債権を持っているのであれば放っておかず早々に回収しなさいということになりますが、
なかには努力を続けてもどうしても回収できない債権が出てきます。
泣き寝入りにならないように、民法ではそれに対応する措置として、
「時効の中断」、平たく言うと時効の進行をストップし振出しに戻る方法が定められています。
時効を中断させるためにすること
時効を中断させる方法は3つあります。
承認
債務者に債務があることを承認してもらう方法です。
実務上では、売掛金残高確認書に債務者の印鑑をもらっておく方法、
いついつまでに支払いをするというような約束書に署名をもらっておく方法、
債権の一部のみを回収し領収証を渡しておく方法などが挙げられます。
請求
請求には、裁判上で行うものと、裁判外で行うものがあります。
裁判上で行う請求は、支払督促の申し立てなどが挙げられます。
裁判外の請求としては内容証明郵便が定められておりますが、中断の効果は6カ月と限られており、
6カ月以内に裁判上の請求をしないと時効の中断の効果は得られません。
つまり、内容証明郵便は時効の期限を6カ月間延長させることができる方法であり、
延長期間内に何もしなければ時効期限を迎えてしまうことになります。
差押え・仮差押え・仮処分
裁判上で行う手続きになります。
※請求書を送るという行為は催告に当たるため相手が受け取っていることが明らかでも時効の中断とはなりません。
そのため、請求書だけを送り続けても時効対策とはなりませんのでご注意ください。
債権内容ごとの消滅時効の完成期間
民法は一般債権の時効消滅期間は原則10年と定めております(民法167条1項)。
また商法には債権者または債務者のどちらかが商人である場合に生じた債権については、
5年と定められております(商法522条)。
ただし商法には「他の法令により5年より短い期間が定められていればその期間による」という規定があり、
(短期消滅時効といいます。)債権の種類によってその期間は異なります。
主な内容が以下の通りです。
10年
・個人間で売買を行った場合の代金
・個人間の貸付金
5年
・商取引上の貸付金
・地代家賃
・利息
3年
・自動車の修理代金
・病院などで支払う医療費
・建設業者、土木業者が行う設計・施工など
2年
・卸売業者、小売業者が販売する商品の代金
・学校や学習塾などの月謝
・給料、ボーナス
・理容料など
1年
・飲食店代金
・映画館代金
・ホテルの宿泊料
・レンタルDVDなどの料金など
自社の行う事業の内容ごとに消滅期間を把握しておくことはもちろんですが、
請求書を渡しただけで安心することなく、継続的に相手方とコンタクトをとることで、
しっかり回収までもっていくことが重要です。
最低でも売掛金を放っておくことは資金繰りの悪化に直結するため避けるべきであるといえます。
おわりに
最後までお読みくださりありがとうございます。
税金や会計でお困りのことがございましたらお問合せフォームをご利用ください。
東京都新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所、税理士の阿部でした。