税理士法人 阿部会計事務所 税理士法人 阿部会計事務所

理士ブログ

数字が読める社長は、判断が速い。

投稿:2026.06.22  更新日:2026.04.29

はじめに

こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。

「財務分析」と聞くと、難しい指標がズラッと並んで、急に眠くなる…という方も多いかもしれません。

ですが、財務分析の本質はシンプルです。

会社の数字を“見える化”して、次の一手を決めるための道具。これに尽きます。

決算書は、いわば会社の成績表です。

ただ、成績表は見方を知らないと「良いのか悪いのか」が分かりません。

財務分析では、決算書(貸借対照表・損益計算書)を材料に、

  • どれだけ儲ける力があるか(収益性)
  • どれだけ倒れにくいか(安全性)
  • どれだけ伸びているか(成長性)
    をチェックします。

本記事では、税理士として企業支援の現場でよく使う指標を、

①収益性、②安全性、③成長性の3つに分けて解説します。

計算式は最小限にしつつ、「どう使うか」「どこが落とし穴か」を中心にお話しします。


① 収益性(資本利益率、売上高利益率、資本回転率)

〜“儲かる会社”は、利益だけでなく回転も上手い〜

収益性とは、端的に言えば「どれだけ儲ける力があるか」です。

ただし、収益性は「利益が出ているか」だけでは判断できません。

ここがポイントです。たとえば、

  • 利益率は高いが、売上が伸びない会社
  • 売上は大きいが、利益が薄い会社
  • 資産が眠っていて回転が遅い会社
    それぞれ“儲け方のクセ”が違います。

収益性を見るときは、次の3つをセットで考えるのが鉄板です。

  1. 資本利益率(ROA/ROEのイメージ)
  2. 売上高利益率
  3. 資本回転率

1) 資本利益率:投入した資本でどれだけ稼げたか

資本利益率は、「会社が使っている資本(資産や自己資本)に対して、どれだけ利益を出したか」を見る指標です。
イメージとしては、会社の“総合点”です。

  • 利益率が高くても、資産が重くて動きが遅いと低くなる
  • 逆に、利益率がそこそこでも、回転が速いと高くなる

この指標が高い会社は、銀行から見ても「返済原資を生みやすい会社」と評価されやすいです。

使い方のコツ
資本利益率が落ちたときは、原因を「利益の低下」と「回転の低下」に分解します。

  • 利益が落ちた → 値上げ、原価低減、固定費の見直し
  • 回転が落ちた → 在庫圧縮、売掛回収、遊休資産の整理
    対策の方向性が変わります。

2) 売上高利益率:1円の売上から何円残るか

売上高利益率は、売上に対する利益の割合です。
経営者が最初に見るべき指標は、実はここです。

利益率には段階があります。

  • 粗利率(売上総利益率)
  • 営業利益率
  • 経常利益率
  • 純利益率

喫茶店なら原価率(材料費)や人件費が効きますし、建設業なら外注比率が効きます。

業種で“普通の利益率”が違うので、同業比較をするのが基本です。

よくある落とし穴
値上げを避け続けると、利益率が少しずつ削れます。
削れているのに気づきにくいので、月次で利益率の推移を追うのが強いです。

3) 資本回転率:資産をどれだけ回して売上を作っているか

資本回転率は、ざっくり言えば「同じ資産でどれだけ売上を回せているか」です。

資産を上手に回す会社は、少ない投資で売上を作れます。

回転率が落ちる典型は次の3つです。

  • 在庫が増えている
  • 売掛金が増えている(回収が遅い)
  • 遊休資産がある(使っていない設備・不動産など)

利益率が良くても回転が悪いと、資金繰りが苦しい会社になります。

「儲かってるのにお金がない」は、だいたい回転の問題です。


② 安全性(自己資本比率、流動比率、固定比率)

〜“倒れにくい会社”は、派手じゃないけど強い〜

安全性は「潰れにくさ」を見る指標です。

金融機関が一番気にするのが、実はこの安全性です。

なぜなら、銀行にとっては「返ってくるかどうか」が最重要だからです。

安全性を見るときの基本セットは次の3つ。

  1. 自己資本比率
  2. 流動比率
  3. 固定比率

1) 自己資本比率:借金頼みではない体質か

自己資本比率は、総資産のうち自己資本がどれだけ占めるかを示します。

高いほど借入依存が低く、財務体質が強いと評価されます。

ただし、自己資本比率が高すぎても「借入ができない(実績がない)」という見え方になる場合もあり、

資金調達戦略とセットで考えるのが大切です。

改善の基本

  • 利益を出して内部留保を積む
  • 過剰な役員貸付・仮払金を減らす
  • 資産を軽くする(在庫・売掛・遊休資産の圧縮)

2) 流動比率:短期の支払いに耐えられるか

流動比率は「流動資産 ÷ 流動負債」で、短期の支払い能力を見ます。

現預金、売掛金、在庫などで、買掛金、短期借入、未払金などを払えるかという視点です。

流動比率が悪化する原因は、意外と単純です。

  • 在庫が増えた
  • 売掛の回収が遅れた
  • 短期借入が増えた
    この3つが多いです。

月次で「資金繰りが苦しい」と感じたら、流動比率の悪化が起きていないかを見ると原因が掴めます。

3) 固定比率:固定資産を自己資本で賄えているか

固定比率は「固定資産 ÷ 自己資本」で、長く使う資産(設備等)を、どの資本で支えているかを見ます。

固定資産はすぐ現金化できないので、これを短期の借入で賄っていると、資金繰りが苦しくなりやすいです。

設備投資をした年に資金繰りが悪化する会社は、固定比率が悪化していることが多いです。

投資を止めるのではなく、「投資の資金調達の設計」を見直すべきサインです。


③ 成長性(売上高増加率、自己資本増加率、純利益増加率)

〜成長している会社は“数字の伸び方”がキレイ〜

成長性は「伸びているか」を見る指標です。

ここで大切なのは、売上だけ伸びていても危険だということ。

売上増は、時に資金繰りを悪化させます(運転資金が増えるため)。

成長性は、次の3つをセットで見ます。

  1. 売上高増加率
  2. 自己資本増加率
  3. 純利益増加率

1) 売上高増加率:伸びているか、伸び方は健全か

売上が伸びているのは良いことですが、「伸び方」に注意が必要です。

  • 値引きで伸ばしていないか
  • 利益率を犠牲にしていないか
  • 回収サイトが悪化していないか(売掛が増えすぎていないか)

売上増加率を見るときは、必ず利益率とセットで見てください。
売上が伸びても利益が増えないなら、体力が削れます。

2) 自己資本増加率:稼いだ利益が会社に残っているか

自己資本増加率は、成長の“持続力”を示します。
自己資本が増えている会社は、利益が積み上がって体力が強くなっている会社です。

自己資本が増えない理由は、だいたい次のどれかです。

  • 利益が出ていない
  • 役員報酬や配当で外に出している
  • 赤字補填で消えている
  • 資産が膨らみすぎている(在庫・売掛など)

成長のためには、売上だけでなく「自己資本も増える成長」を目指すのが理想です。

3) 純利益増加率:最終的に“残る力”が伸びているか

純利益増加率は、会社の最終結果です。

売上が伸びても、純利益が伸びないなら、成長しているようで実は苦しい状態かもしれません。

純利益が伸びない原因は、次の2つに集約されます。

  • 粗利が伸びていない(値上げできていない、原価が上がっている)
  • 固定費が増えすぎている(人件費、家賃、広告費など)

成長性は、売上・自己資本・純利益が“バランスよく伸びる”のが理想です。


まとめ:財務分析は「3つの質問」で十分強くなる

財務分析は難しい指標を覚えることではなく、次の3つの質問に答えることです。

  1. 儲ける力はあるか?(収益性)
  2. 倒れにくいか?(安全性)
  3. 伸びているか?(成長性)

そして、指標は単発ではなく「セット」で見ます。

  • 収益性=利益率 × 回転
  • 安全性=自己資本と短期支払い能力
  • 成長性=売上だけでなく、利益と自己資本も増えているか

お問い合わせ CONTACT

お気軽にご相談、お問い合わせください。

お急ぎの方は
電話よりお問い合わせください。

受付時間 9:00~17:00