税理士ブログ
数字が読める社長は、判断が速い。
はじめに
こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。
「財務分析」と聞くと、難しい指標がズラッと並んで、急に眠くなる…という方も多いかもしれません。
ですが、財務分析の本質はシンプルです。
会社の数字を“見える化”して、次の一手を決めるための道具。これに尽きます。
決算書は、いわば会社の成績表です。
ただ、成績表は見方を知らないと「良いのか悪いのか」が分かりません。
財務分析では、決算書(貸借対照表・損益計算書)を材料に、
- どれだけ儲ける力があるか(収益性)
- どれだけ倒れにくいか(安全性)
- どれだけ伸びているか(成長性)
をチェックします。
本記事では、税理士として企業支援の現場でよく使う指標を、
①収益性、②安全性、③成長性の3つに分けて解説します。
計算式は最小限にしつつ、「どう使うか」「どこが落とし穴か」を中心にお話しします。
① 収益性(資本利益率、売上高利益率、資本回転率)
〜“儲かる会社”は、利益だけでなく回転も上手い〜
収益性とは、端的に言えば「どれだけ儲ける力があるか」です。
ただし、収益性は「利益が出ているか」だけでは判断できません。
ここがポイントです。たとえば、
- 利益率は高いが、売上が伸びない会社
- 売上は大きいが、利益が薄い会社
- 資産が眠っていて回転が遅い会社
それぞれ“儲け方のクセ”が違います。
収益性を見るときは、次の3つをセットで考えるのが鉄板です。
- 資本利益率(ROA/ROEのイメージ)
- 売上高利益率
- 資本回転率
1) 資本利益率:投入した資本でどれだけ稼げたか
資本利益率は、「会社が使っている資本(資産や自己資本)に対して、どれだけ利益を出したか」を見る指標です。
イメージとしては、会社の“総合点”です。
- 利益率が高くても、資産が重くて動きが遅いと低くなる
- 逆に、利益率がそこそこでも、回転が速いと高くなる
この指標が高い会社は、銀行から見ても「返済原資を生みやすい会社」と評価されやすいです。
使い方のコツ
資本利益率が落ちたときは、原因を「利益の低下」と「回転の低下」に分解します。
- 利益が落ちた → 値上げ、原価低減、固定費の見直し
- 回転が落ちた → 在庫圧縮、売掛回収、遊休資産の整理
対策の方向性が変わります。
2) 売上高利益率:1円の売上から何円残るか
売上高利益率は、売上に対する利益の割合です。
経営者が最初に見るべき指標は、実はここです。
利益率には段階があります。
- 粗利率(売上総利益率)
- 営業利益率
- 経常利益率
- 純利益率
喫茶店なら原価率(材料費)や人件費が効きますし、建設業なら外注比率が効きます。
業種で“普通の利益率”が違うので、同業比較をするのが基本です。
よくある落とし穴
値上げを避け続けると、利益率が少しずつ削れます。
削れているのに気づきにくいので、月次で利益率の推移を追うのが強いです。
3) 資本回転率:資産をどれだけ回して売上を作っているか
資本回転率は、ざっくり言えば「同じ資産でどれだけ売上を回せているか」です。
資産を上手に回す会社は、少ない投資で売上を作れます。
回転率が落ちる典型は次の3つです。
- 在庫が増えている
- 売掛金が増えている(回収が遅い)
- 遊休資産がある(使っていない設備・不動産など)
利益率が良くても回転が悪いと、資金繰りが苦しい会社になります。
「儲かってるのにお金がない」は、だいたい回転の問題です。
② 安全性(自己資本比率、流動比率、固定比率)
〜“倒れにくい会社”は、派手じゃないけど強い〜
安全性は「潰れにくさ」を見る指標です。
金融機関が一番気にするのが、実はこの安全性です。
なぜなら、銀行にとっては「返ってくるかどうか」が最重要だからです。
安全性を見るときの基本セットは次の3つ。
- 自己資本比率
- 流動比率
- 固定比率
1) 自己資本比率:借金頼みではない体質か
自己資本比率は、総資産のうち自己資本がどれだけ占めるかを示します。
高いほど借入依存が低く、財務体質が強いと評価されます。
ただし、自己資本比率が高すぎても「借入ができない(実績がない)」という見え方になる場合もあり、
資金調達戦略とセットで考えるのが大切です。
改善の基本
- 利益を出して内部留保を積む
- 過剰な役員貸付・仮払金を減らす
- 資産を軽くする(在庫・売掛・遊休資産の圧縮)
2) 流動比率:短期の支払いに耐えられるか
流動比率は「流動資産 ÷ 流動負債」で、短期の支払い能力を見ます。
現預金、売掛金、在庫などで、買掛金、短期借入、未払金などを払えるかという視点です。
流動比率が悪化する原因は、意外と単純です。
- 在庫が増えた
- 売掛の回収が遅れた
- 短期借入が増えた
この3つが多いです。
月次で「資金繰りが苦しい」と感じたら、流動比率の悪化が起きていないかを見ると原因が掴めます。
3) 固定比率:固定資産を自己資本で賄えているか
固定比率は「固定資産 ÷ 自己資本」で、長く使う資産(設備等)を、どの資本で支えているかを見ます。
固定資産はすぐ現金化できないので、これを短期の借入で賄っていると、資金繰りが苦しくなりやすいです。
設備投資をした年に資金繰りが悪化する会社は、固定比率が悪化していることが多いです。
投資を止めるのではなく、「投資の資金調達の設計」を見直すべきサインです。
③ 成長性(売上高増加率、自己資本増加率、純利益増加率)
〜成長している会社は“数字の伸び方”がキレイ〜
成長性は「伸びているか」を見る指標です。
ここで大切なのは、売上だけ伸びていても危険だということ。
売上増は、時に資金繰りを悪化させます(運転資金が増えるため)。
成長性は、次の3つをセットで見ます。
- 売上高増加率
- 自己資本増加率
- 純利益増加率
1) 売上高増加率:伸びているか、伸び方は健全か
売上が伸びているのは良いことですが、「伸び方」に注意が必要です。
- 値引きで伸ばしていないか
- 利益率を犠牲にしていないか
- 回収サイトが悪化していないか(売掛が増えすぎていないか)
売上増加率を見るときは、必ず利益率とセットで見てください。
売上が伸びても利益が増えないなら、体力が削れます。
2) 自己資本増加率:稼いだ利益が会社に残っているか
自己資本増加率は、成長の“持続力”を示します。
自己資本が増えている会社は、利益が積み上がって体力が強くなっている会社です。
自己資本が増えない理由は、だいたい次のどれかです。
- 利益が出ていない
- 役員報酬や配当で外に出している
- 赤字補填で消えている
- 資産が膨らみすぎている(在庫・売掛など)
成長のためには、売上だけでなく「自己資本も増える成長」を目指すのが理想です。
3) 純利益増加率:最終的に“残る力”が伸びているか
純利益増加率は、会社の最終結果です。
売上が伸びても、純利益が伸びないなら、成長しているようで実は苦しい状態かもしれません。
純利益が伸びない原因は、次の2つに集約されます。
- 粗利が伸びていない(値上げできていない、原価が上がっている)
- 固定費が増えすぎている(人件費、家賃、広告費など)
成長性は、売上・自己資本・純利益が“バランスよく伸びる”のが理想です。
まとめ:財務分析は「3つの質問」で十分強くなる
財務分析は難しい指標を覚えることではなく、次の3つの質問に答えることです。
- 儲ける力はあるか?(収益性)
- 倒れにくいか?(安全性)
- 伸びているか?(成長性)
そして、指標は単発ではなく「セット」で見ます。
- 収益性=利益率 × 回転
- 安全性=自己資本と短期支払い能力
- 成長性=売上だけでなく、利益と自己資本も増えているか

