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理士ブログ

やさしく解説する「葬儀社の税務・会計の要点」

投稿:2026.05.18  更新日:2026.04.29

はじめに

こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。

葬儀社の仕事は、人生の大切な節目に寄り添う、極めて社会的意義の大きいサービスです。

一方で、会計・税務の世界では、葬儀業ならではの論点がいくつもあります。

請負取引としての売上計上時期、会葬御礼品など物販の扱い、

病院や寺院僧侶との関係で出てくるリベートの整理、

配膳や司会など外注スタッフに支払う報酬と源泉所得税。

どれも「現場では当たり前」でも、帳簿の上では整理が必要なものばかりです。

本記事では、葬儀社の実務に沿って、税務調査で突っ込まれやすいポイントも含め、

①収益と費用の対応、②リベートの考え方、③外注費と源泉徴収の注意点を解説します。


① 葬儀における収益と費用の関係

〜請負取引としての売上計上と、会葬御礼品の物販を分けて考える〜

1. 葬儀は「役務提供(サービス)」であり、基本は請負の考え方

葬儀社の売上は、一般的に「葬儀一式」という形で請求されます。

会場手配、祭壇、搬送、火葬手続、司会、配膳、返礼品の手配…など、

複数の要素をまとめて提供するため、会計上はサービス提供(役務提供)の側面が強い取引です。

この場合、売上の計上は、原則として「役務提供が完了した時点」、

実務的には葬儀が完了した日(施行完了日)で認識するのが自然です。

「入金があった日」や「見積を出した日」ではなく、

施行という成果物が完了したタイミングを基準にすると、

収益と費用の対応が取りやすくなります。

よくあるズレ

  • 施行は月末、請求は翌月、入金は翌々月
    → 売上計上が入金基準になってしまうと、月次や決算の利益がブレます。

月次管理でも「施行ベース」で売上と原価(外注費・仕入)を合わせると、

採算が見えやすくなり、金融機関への説明にも強くなります。

2. 前受金(内金・前受け)の処理:売上にしないのが基本

葬儀費用は、施行前に内金が入ることもあります。

ここは会計処理としては前受金(負債)として整理するのが基本です。

サービス提供が完了する前に入ったお金は、原則「まだ売上ではない」という考え方です。

もちろん、規模や実務慣行により処理は様々ですが、

決算では「前受金のまま残っていないか」

「施行完了しているのに売上に振り替えていないものがないか」を確認するのが鉄板です。

3. 会葬御礼品は“販売”として分けると見え方が良くなる

葬儀では、会葬者への御礼として返礼品(会葬御礼品)をお渡しすることが一般的です。

ここが会計上ややこしくなりやすいポイントです。

理由は、「葬儀サービスの一部」として含めることもできれば、

「物品販売」として分けることもできるからです。

実務上のおすすめ

  • 葬儀施行料(役務)
  • 会葬御礼品(商品売上)
    と分けて管理する方法は、粗利管理がしやすく、税務調査でも説明が通りやすいことが多いです。

特に、御礼品は仕入が明確で、数量も施行ごとに整理できるため、

  • 仕入単価
  • 販売単価(請求内訳)
  • 在庫(未使用分の戻り等)
    の管理ができると、利益の見える化が進みます。

4. 値引き・立替・精算の扱いも「内訳」が命

葬儀社の請求書は「一式」が多い一方で、税務・会計的には内訳の存在が重要です。
たとえば、火葬料の立替、供花の手配、料理の追加など、取引の性質が異なるものが混在します。

「一式」にまとめても良いのですが、帳簿の中では

  • 役務収益
  • 物販収益
  • 立替金(実費精算)
    を可能な範囲で分けておくと、後で説明がラクです。

② 病院、寺院僧侶へのリベート

〜“紹介料”のつもりが、税務上は別の顔を持つことがある〜

葬儀の受注経路には、病院からの紹介、寺院との関係、地域のネットワークなどが存在します。

その中で、「紹介」や「協力」への謝礼として金銭が動くことがあり、

これがリベート(紹介料・謝礼)の論点になります。

結論から言うと、ここは非常にセンシティブです。

税務だけでなく、業界のコンプライアンスや契約実務にも関わります。

そのため、税理士としては「何でも経費になります」と軽々には言えません。

重要なのは、実態と根拠資料です。

1. 税務上の基本:実態があり、支払い根拠が明確であること

支払った金銭が税務上の経費(損金)として認められるためには、一般に次が必要です。

  • 何の対価か(役務内容)
  • 相手先(法人名・個人名)
  • 金額の妥当性
  • 支払時期
  • 契約や請求書等の証憑

ところが、紹介料は「契約書がない」「領収書がない」「口頭で」になりがちです。ここが最大のリスクです。

2. 勘定科目は“交際費”で済ませない

紹介料を何でも交際費に入れてしまうと、税務署に「実態は?」と聞かれたときの説明が苦しくなります。

内容が広告宣伝に近いなら広告宣伝費、業務委託に近いなら支払手数料など、

性質に合う科目にする方が整合的です。

「交際費」は便利ですが、便利なものほど疑われやすい。これは税務の鉄則です。

3. 相手が個人か法人かで、源泉徴収や消費税の論点が変わる

寺院(宗教法人)か、僧侶個人か、病院が法人か、医師個人か。

ここで税務の扱いが変わる可能性があります。

特に「個人への支払い」になると、源泉徴収の要否の検討が必要になる場面があります(業務内容によります)。

4. グレーな支払いほど、将来コストが高くなる

「昔からこの地域はこういう慣習で…」という話はよくあります。しかし、税務調査で否認された場合、

  • 追徴税
  • 延滞税
  • 場合によっては重加算税
    といったコストが発生します。さらに、コンプライアンス上の説明も必要になります。

ここは、経営としても税務としても「整理して透明化する」方が、長期的には強いです。


③ 配膳などの外注費に係る源泉所得税

〜外注スタッフへの支払いは“源泉が必要なケース”がある〜

葬儀社では、配膳、司会、音響、受付、搬送補助など、

スポットで外注スタッフを活用することが多いと思います。

ここで注意したいのが、源泉所得税の要否です。

1. 原則:給与か外注かで取り扱いが変わる

同じ「人に払うお金」でも、雇用(給与)と外注(報酬)で税務の取り扱いが変わります。

  • 雇用なら:給与として源泉徴収、年末調整、社会保険の論点
  • 外注なら:報酬として源泉徴収が必要な場合がある(業務内容による)

まず最初に、「その人は従業員か、外注先か」を整理することが重要です。
指揮命令の有無、勤務時間の拘束、代替性(他の人に代われるか)など、実態で判断されます。

2. 外注でも源泉が必要になる典型例

一般論として、個人に対して支払う報酬の中には源泉徴収の対象となるものがあります

(例:原稿料、講演料、デザイン料など)。

葬儀業の現場では、司会者や音響担当など“役務提供”の性質が強い場合、

源泉の要否が論点になることがあります。

支払先が個人事業者か法人かでも扱いが変わるため、支払先の形態確認が重要です。

ここは業務内容の具体により判断が変わるため、実際には

  • 契約書(業務委託契約)
  • 請求書の名義(法人か個人か)
  • 業務内容の記載
    などで整理します。

3. 源泉漏れは“後から会社負担”になりやすい

源泉所得税を引くべき支払いで引かなかった場合、

税務調査で指摘されると、原則として会社側が納付を求められることがあります

(後から本人に請求できるとはいえ、実務では難しいケースも多い)。

つまり、源泉漏れは「税金の払い忘れ」ではなく、会社のコスト増になりやすいのです。

4. 実務でやっておくと強い運用

  • 外注先の区分表(法人/個人、源泉要否)を作る
  • 初回取引で「支払先情報」を必ず取得(インボイス登録番号も含め)
  • 請求書に業務内容を明記してもらう
  • 年末に支払調書の要否を確認する

これだけでも、源泉漏れや調査対応のストレスが激減します。


まとめ:葬儀社の税務は「丁寧な仕事」を数字にも反映させる

葬儀社の会計・税務は、現場の誠実さをそのまま帳簿にも落とすことがポイントです。

  • 収益と費用は、施行(完了)ベースで対応させる
  • 会葬御礼品は物販として整理すると利益管理がしやすい
  • 病院・寺院僧侶への支払いは、実態と証憑が命
  • 外注費は源泉の要否を事前に区分して運用する

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