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お金を“借りる力”は、会社の体力です。~資金調達(融資)の勝ち筋~

投稿:2026.07.06  更新日:2026.04.29

はじめに

こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。

資金調達というと、「とにかく銀行に行けば何とかなる」と思われがちですが、

実務はもう少しシビアです。銀行は“気合い”ではなく、数字とストーリーで判断します。

そして金利上昇や景気変動の局面では、融資の姿勢も変わります。

だからこそ、資金調達は「困ったときの駆け込み」ではなく、平時から整えておく経営技術です。

この記事では、資金調達の中心である「融資」について、
①融資担当者は決算書のどこを見るか
②借入に不利になる勘定科目
③借入のタイプ(保証協会付融資/ビジネスローン/プロパー)

の3テーマで、現場で役立つ形に整理します。


① 融資担当者は決算書のどこを見るか

〜銀行は“利益”だけでなく“返せるか”を見ています〜

銀行の融資担当者が一番気にしているのは、「この会社に貸して、返ってくるか」です。

だから、決算書の見方も“返済可能性”を中心に組み立てられています。

ざっくり言うと、銀行は次の順で見ます。

  1. 返せる力(キャッシュを生む力)
  2. 倒れにくさ(財務の安定)
  3. 資金繰りのクセ(運転資金の管理)
  4. 社長の姿勢(数字の把握と説明)

1. まずは損益計算書:利益の“質”を見る

損益計算書(P/L)では、単に黒字か赤字かだけでなく、

「その利益は安定しているか」「一時的な要因ではないか」を見ます。

  • 売上は伸びているか、急落していないか
  • 粗利率は維持できているか(値引きで売上を作っていないか)
  • 人件費や外注費が適正か(固定費の膨張は危険信号)
  • 経常利益が出ているか(本業の力があるか)

特に銀行は「営業利益」より「経常利益」を重視する傾向があります。

借入金利息も含めた“総合力”を見るためです。

2. 次にキャッシュフロー:返済原資があるか

銀行は「返済は利益ではなくキャッシュから」と考えます。

そこで見るのが、返済原資(ざっくり言うと 税引後利益+減価償却費)です。

よく使われる考え方が、返済負担の目安です。

  • 年間返済額が、返済原資の範囲に収まっているか
  • 返済に対する余裕があるか(余裕がないと追加融資が難しい)

減価償却費は“現金が出ていかない費用”なので、返済原資を増やす要素として評価されます。

設備がある会社が融資で有利になりやすい背景には、こうした見方があります。

3. 貸借対照表:資金繰りのクセが一発でバレる

貸借対照表(B/S)は、銀行が一番好きな書類です。

なぜなら、会社の体質と資金繰りのクセが“嘘をつきにくい”から。

銀行が特に見ているのは次のポイントです。

  • 現預金:手元資金は十分か
  • 売掛金:回収が遅れていないか(増え続けていないか)
  • 在庫:滞留していないか(在庫が資金を食っていないか)
  • 買掛金:支払いサイトが短くて資金が苦しくないか
  • 短期借入金:運転資金を短期で回していないか
  • 自己資本:赤字体質で自己資本が薄くないか

よくある誤解は「黒字なら借りられる」。

実際は「黒字でも資金繰りが悪い会社」は借りにくいです。

売掛と在庫が膨らんで現金が減っている、これが典型です。

4. 最後に補足資料:社長の“説明力”が通るか

銀行は決算書だけでなく、

  • 試算表(直近の月次)
  • 資金繰り表(3〜6ヶ月)
  • 受注状況、主要取引先、今後の見通し
    を求めることがあります。

ここで強いのは、「数字が整っていて、説明が短い会社」。

資料は分厚いほど良いわけではありません。要点が分かれば十分です。


② 借入に不利になる勘定科目

〜“この科目が多い会社は危ない”が、銀行にはあります〜

銀行は、B/Sのある科目を見ると反射的に警戒します。

理由は簡単で、過去に問題になりやすい科目が決まっているからです。

代表的なものを整理します。

1. 役員貸付金:銀行が嫌うトップ常連

役員貸付金は、会社のお金が社長個人に流れている状態です。

銀行から見ると、「貸したお金も会社で使われないかも」という懸念につながります。

対策は、

  • 役員報酬や賞与の適正化で解消
  • 返済計画を作って減らす
  • 私的支出の混在をなくす
    です。
    “過去の積み残し”でも、減らす姿勢があると評価が変わります。

2. 仮払金・立替金:中身不明は信用を削る

仮払金が多い会社は、「経理が整理できていない会社」と見られます。

仮払金は“箱”なので便利ですが、銀行から見ると“ブラックボックス”です。

仮払金が残る場合は、

  • 内容の内訳表を作る
  • いつ精算するか決める
  • 金額を圧縮する
    これだけで見え方が変わります。

3. 棚卸資産(在庫)の過多:資金繰り悪化のサイン

在庫は資産ですが、売れなければ現金になりません。
在庫が増え続けている会社は、

  • 売れ残り
  • 過剰仕入
  • 評価が過大
    の疑いが出ます。

特に、売上が伸びていないのに在庫が増えている場合は、警戒度が上がります。

4. 売掛金の増加:回収遅れは危険信号

売掛金が増えるのは、売上が伸びているから…とは限りません。

回収が遅れたり、特定先の滞留が起きている可能性もあります。

銀行は「売掛金の回収条件」「主要先の信用」「滞留の有無」を見ます。

売掛の内訳(先別・期日別)を出せる会社は強いです。

5. 短期借入金の厚み:運転資金が回っていない

短期借入が多い会社は、「返済に追われている」印象になりやすいです。

短期で運転資金を回すと、更新(借換)が必要になり、資金繰りが不安定になります。

可能なら、

  • 短期→長期への借換
  • 返済期間の適正化
    で、返済の安定化を図ると銀行評価が上がります。

③ 借入のタイプ(保証協会付融資/ビジネスローン/プロパー)

〜“どこから借りるか”で、条件も将来も変わる〜

借入は一括りではありません。

資金調達の設計で重要なのは、目的と状況に応じてタイプを選ぶことです。


1. 保証協会付融資:はじめての融資に強い“入口”

信用保証協会が保証を付ける融資です。

銀行にとってリスクが軽減されるため、中小企業では利用頻度が高いです。

メリット

  • 融資が通りやすい
  • はじめての借入でも入口になりやすい
  • 条件が比較的安定しやすい

注意点

  • 保証料がかかる(実質コストが上がる)
  • 保証枠に限度がある(使い切ると次が苦しい)
  • 条件変更時も協会との調整が必要

保証協会付は「まず資金調達の実績を作る」には有効ですが、

長期的にはプロパーとのバランスを考えるのが理想です。


2. ビジネスローン:スピードは速いがコストは高い

銀行融資よりも審査が早いものが多く、手続きも簡便な反面、金利や手数料が高めになることがあります。

向いているケース

  • 一時的なつなぎ資金
  • すぐに資金が必要で、銀行融資が間に合わない
  • 小口で短期の資金需要

注意点

  • 金利が高いと、利益を圧迫しやすい
  • 返済負担が重くなりやすい
  • 銀行からの見え方が悪くなる場合がある(資金繰りが苦しい印象)

ビジネスローンは“便利枠”ですが、常用すると財務体質を削ります。

使うなら出口(いつ完済するか)を決めるのが大切です。


3. プロパー融資:銀行が本気で応援してくれる“本命”

プロパー融資は、保証協会を付けずに銀行が直接リスクを取る融資です。

銀行が「この会社なら大丈夫」と判断したときに出てきます。

メリット

  • 保証料が不要
  • 借入枠が広がりやすい
  • 銀行との関係が強くなる(信用力の証明)

注意点

  • ある程度の実績と説明力が必要
  • 銀行が慎重に審査するため準備が重要
  • 事業計画や月次資料が求められやすい

プロパーを引き出す鍵は、派手な計画ではなく

  • 月次の数字が整っている
  • 資金繰りを説明できる
  • 返済余力が見える
    この3点です。

まとめ:資金調達は「決算書×科目整理×借入設計」で勝てる

資金調達を成功させるための要点を整理します。

  1. 銀行は決算書で“返せる力”を見ている
  2. 役員貸付金・仮払金・在庫過多などは融資に不利
  3. 借入タイプは目的に合わせて選ぶ
    • 入口は保証協会付
    • 緊急はビジネスローン(ただし短期で出口設計)
    • 本命はプロパー(数字と説明力が鍵)

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