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「いくら売れば黒字?」が秒で分かる。~損益分岐点分析の基本~

投稿:2026.08.10  更新日:2026.04.29

はじめに

こんにちは、新宿区西新宿の税理士法人阿部会計事務所の税理士阿部です。

「売上はそこそこあるのに、なぜか利益が出ない」

「忙しいのに、お金が残らない」

この手の相談で、私が最初に確認するのが 損益分岐点 です。

損益分岐点とは、超ざっくり言えば「ここまで売れば赤字が消えるライン」。

このラインが分かると、経営の判断が一気に速くなります。

  • 値上げするべきか
  • 人を増やしていいか
  • 広告を打っていいか
  • 家賃の高い場所に移転していいか
    こういう意思決定が、“感覚”ではなく“数字”でできるようになります。

本記事では、①変動費と固定費、②損益分岐点とは何か、③損益分岐点分析(特に目標売上高の考え方)を、

なるべく分かりやすく解説します。


① 変動費と固定費

〜損益分岐点のスタート地点は「費用を2つに分ける」こと〜

損益分岐点分析は難しいテクニックではありません。

最初にやることはたった1つ。費用を「変動費」と「固定費」に分けることです。

1) 変動費とは:売上に比例して増減する費用

変動費は、売上が増えると増え、売上が減ると減る費用です。代表例は次のとおり。

  • 仕入(飲食なら食材、物販なら商品仕入)
  • 外注費(売上に応じて増えるタイプ)
  • 販売手数料(決済手数料、プラットフォーム手数料)
  • 送料(販売数に比例する場合)

ポイントは「売上がゼロならゼロに近づく費用」というイメージです。

2) 固定費とは:売上に関係なく発生する費用

固定費は、売上がゼロでもかかる費用です。代表例は次のとおり。

  • 家賃
  • 正社員の固定給
  • 減価償却費(実際の現金支出ではないが費用として出る)
  • リース料
  • 水道光熱費の基本料金
  • 通信費(固定契約分)
  • 保険料、顧問料

固定費の怖いところは、売上が落ちても減らないこと。

だから固定費が重い会社ほど、損益分岐点が高くなり、経営が“重たく”なります。

3) “どっち?”で迷う費用がある(ここが実務の肝)

実務では「人件費」や「外注費」が迷いやすいです。

  • 時給アルバイト:売上に応じて増減しやすい→変動費寄り
  • 正社員固定給:売上に関係なく発生→固定費
  • 外注費:案件ごとに発生→変動費寄り
  • ただし、毎月固定で払っている外注:固定費寄り

損益分岐点分析は“ざっくりでOK”です。

完璧に分類するより、毎月同じルールで続ける方が価値があります。

4) 変動費率(=売上に対する変動費の割合)が超重要

損益分岐点分析で最も大事なのは、変動費率です。

変動費率が高い(=粗利が薄い)会社は、売上をどれだけ上げても利益が出にくい。

逆に粗利が厚い会社は、少し売上が増えるだけで利益が出ます。

だから、損益分岐点は「売上」ではなく、実は「粗利」で考えると分かりやすいです。


② 損益分岐点とは

〜“利益がゼロになる売上”=赤字が消えるライン〜

損益分岐点とは、利益がちょうどゼロになる売上高のことです。

この売上を超えると黒字、下回ると赤字。

イメージとしては、会社には毎月「固定費」という重りがあり、

売上から生まれる粗利(売上−変動費)でその重りを持ち上げる。

重りが持ち上がり切った瞬間が損益分岐点です。

1) 損益分岐点売上高の基本式

ざっくりの式はこうです。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率

ここでいう「限界利益率」は、
(売上−変動費)÷ 売上
つまり「粗利率に近いもの」です。

例:

  • 固定費 200万円
  • 限界利益率 40%
    なら、損益分岐点売上高は
    200万円 ÷ 0.4 = 500万円
    となり、月500万円売ってやっと赤字が消える、ということです。

2) 損益分岐点比率:今の売上に対して安全かどうか

もう一つ便利なのが「損益分岐点比率」。
ざっくり言うと、
実際の売上に対して、損益分岐点が何%か
を見る指標です。

  • 80%なら比較的安全(売上が2割落ちても耐えやすい)
  • 95%ならギリギリ(少し落ちたら赤字)
  • 110%なら現状赤字(そもそも届いていない)

この比率を見れば「今のビジネスの危険度」が見えます。

3) 損益分岐点の“怖さ”は固定費増で一気に跳ねる

損益分岐点は固定費に敏感です。

家賃が10万円上がる、正社員を1人増やす、リースを入れる。

この固定費増は、損益分岐点をグッと押し上げます。

だからこそ、固定費を増やす意思決定(採用・移転・設備投資)をするときに、

損益分岐点は必ず見るべきです。


③ 損益分岐点分析(目標売上高の把握を中心に)

〜“黒字にするために必要な売上”を逆算するのが本番〜

損益分岐点分析の真価は、「損益ゼロ」を知ることではなく、

目標利益を達成するために必要な売上を逆算できることです。

1) 目標売上高の基本式

目標利益を設定する場合、考え方はこうです。

目標売上高 =(固定費+目標利益)÷ 限界利益率

例:

  • 固定費 200万円
  • 目標利益 50万円
  • 限界利益率 40%
    なら
    (200+50)÷0.4=625万円
    月625万円売れば、目標利益50万円が見えるということです。

この計算ができると、「今月はどれだけ売ればいいか」が明確になります。

2) 目標利益は“現実的な定義”を決める

目標利益は、人によって定義が違います。

税理士としておすすめするのは、次のどれを目標にするかを先に決めること。

  • 役員報酬を払った後の利益(最終利益)
  • 借入返済まで含めて残したいキャッシュ
  • 設備投資や納税のために積みたい金額

「利益」ではなく「手元に残したい現金」で目標を置くと、経営はより実務的になります。

3) 目標売上を“行動”に落とす:単価×客数×回数

目標売上高が分かったら、それを行動に分解します。

売上は、基本的に


客数 × 客単価 × 回数

でできています。

例:月625万円の売上目標なら

  • 客単価 2,500円
  • 営業日 25日
    だと、1日あたりの売上目標は25万円
    → 1日100人(2,500円×100)
    といった具合に「やること」に落ちます。

これが損益分岐点分析の一番の価値です。数字が“行動”に変わります。

4) 値上げ・原価改善のインパクトは絶大

損益分岐点分析をやると、値上げや原価改善がいかに効くかが見えます。

例えば、限界利益率が40%→45%に上がるだけで、損益分岐点は大きく下がります。

同じ固定費なら、必要売上が減る。つまり「楽になる」。

忙しいのに儲からない会社ほど、売上を追いかける前に

  • 値付け
  • 原価
  • 手数料
    を見直す方が、利益改善が速いことが多いです。

5) 固定費の見直しは“最後の手段”ではなく“設計”

固定費削減はしんどいですが、固定費を減らすと損益分岐点は確実に下がります。

ただし、固定費は“必要な投資”でもあります。だから、「削る」ではなく「設計」が大切です。

  • 家賃は売上に見合っているか
  • 人件費は売上を生む体制になっているか
  • 固定費を増やすなら、同時に粗利改善策があるか

固定費増は悪ではありません。

ただし損益分岐点が上がる以上、それに見合う売上と利益の設計が必要です。


まとめ:損益分岐点分析は「経営の地図」になる

損益分岐点分析で分かることは、実はとても実務的です。

  • 変動費と固定費を分ける
  • 損益分岐点(赤字が消える売上)を知る
  • 目標利益から必要売上を逆算する
  • 行動に落とす(客数×単価×回数)
  • 値上げや原価改善の効果が数字で見える

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