税理士ブログ
絵画は減価償却できる?
オフィスや店舗に飾る目的で購入される「絵画」。
デザイン性や雰囲気づくりの一環として、事業用資産として導入されるケースが増えています。
では、このような絵画は税務上の「固定資産」として減価償却の対象になるのでしょうか?
この記事では、絵画の減価償却に関する基本的な考え方と、実務上の注意点を税理士の視点から解説します。
■ 基本の考え方:絵画は減価償却資産になり得るのか?
税務上、減価償却資産とは、「使用により劣化・減価する資産であり、一定期間にわたり繰り返し使用される資産」のことをいいます。
建物や備品、機械装置などが典型例ですが、絵画のような美術品も一定の条件を満たせば減価償却が認められます。
■ 減価償却の対象となる絵画の要件
絵画が減価償却できるかどうかは、金額と用途によって判断されます。
◎ ① 原則:1点100万円未満の絵画は減価償却可能
国税庁の通達により、取得価額が1点100万円未満の絵画等は、通常の備品等と同様に減価償却の対象とされています(法人税基本通達7-1-1の注書)。
この場合、一般的な美術品として、事務所装飾等に使われているならば、10年耐用(器具備品)として処理されるのが一般的です。
◎ ② 100万円以上の絵画は原則として減価償却できない
一方で、取得価額が100万円以上の絵画等(書画、彫刻等)は、美術品として価値が恒久的であると見なされるため、原則として減価償却できません。
この場合は、資産計上のみ(償却せずに永久保存)となり、会計上も税務上も費用化できません。
■ 例外:100万円以上でも減価償却できるケースとは?
以下のような場合は、100万円以上の絵画でも減価償却が認められることがあります。
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店舗や応接室などに設置され、営業用の装飾として明確に使用されている
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日常的に人の目に触れ、展示・装飾の用途が明確である
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美術館級の保存環境(温湿度管理、専用保管)ではなく、通常の事業用建物内での使用である
→ このような実態が確認できれば、税務上も「事業の用に供する資産」として認められる可能性があります。
ただし、税務調査での確認リスクがあるため、取得時の状況・使用目的・設置状況を資料として残しておくことが非常に重要です。
■ 減価償却方法と耐用年数の目安
絵画が減価償却資産と認められる場合、通常は「器具及び備品」としての区分で処理されます。
その場合、耐用年数は10年が一般的な目安となります(耐用年数表「その他の器具備品」より)。
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定額法または定率法(青色申告者は選択可能)で償却
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取得価額に応じて少額減価償却資産の特例も検討可能(30万円未満)
■ 実務上の注意点
◎ 1. 減価償却の判断基準は「1点あたり」
たとえば、合計50万円の3点セットの絵画を購入した場合でも、1点ずつの価額で判断されます。
1点が20万円程度であれば、それぞれを減価償却資産として処理可能です。
◎ 2. 美術品としての性質が強い場合は要注意
・著名画家の原画やサイン入り作品
・展示会用の収蔵目的の購入
・将来の資産価値上昇を前提とした購入
このような絵画は、「資産価値の減少がない」と判断されることも多く、減価償却は認められない可能性があります。
→ 購入目的が「業務用装飾」であることを明確にすることが大切です。
◎ 3. 減価償却資産台帳の記載と写真の保存を
税務調査時に、絵画の現物が事業用に使用されているか確認されることがあります。
設置場所の写真や、購入時の資料(請求書、納品書、設置報告書など)をしっかり保存しておきましょう。
■ まとめ|絵画の減価償却は「金額と実態」で判断される
絵画は、使い方や金額によっては、通常の固定資産と同様に減価償却が可能です。
ただし、100万円を超える場合は「芸術的価値の保存目的」とみなされるおそれがあるため、実際の使用実態をしっかり記録しておくことが重要です。
経費にできるかどうか、減価償却できるかどうかは、税務調査における判断ポイントにもなりやすいため、判断に迷う場合は事前の相談がおすすめです。
当事務所では、絵画や美術品の取得に関する会計・税務の判断サポート、減価償却資産台帳の整備、設置状況の確認なども承っております。
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。